新型コロナウイルスの影響で、国内では4月に緊急事態宣言が発出され、世界各国では都市封鎖(ロックダウン)が相次ぐなか、巣ごもり需要の拡大を背景にゲーム関連銘柄の業績が好調だ。そのなかでも中心的な存在である任天堂(7974)の2020年4~6月期(1Q)決算は市場予想を大幅に上回る増収増益の着地で、ポジティブサプライズとなりそうだ。株価は高値更新し、上値追いの展開になるか注目されよう。7日午前の取引では買いが先行し、株価は7月上旬以来となる5万円台を回復している。
■ポジティブサプライズ
任天堂が8月6日発表した1Q決算は、売上高が前年同期比2倍の3581億円、営業利益は5.3倍の1447億円と大幅な増収増益。ある程度の業績好調は織り込み済みだが、QUICKコンセンサス(11社平均)の売上高2447億円、営業利益634億円を大幅に超過しており、ポジティブサプライズになったとみられる。
家庭用ゲーム機「スイッチ」が大半を占めるハードウェアの販売台数は前年同期比2.7倍の568万台、ソフトウェアの販売本数は同2.2倍の5043万本に急増。さらに、ダウンロード専用ソフトやスイッチオンラインも好調で、デジタル売上高が前年同期比3.2倍の1010億円と伸びたことも寄与した。
■夏休みシーズンも続く巣ごもり需要
3月に発売した「あつまれどうぶつの森」が1063万本(累計販売本数は2240万本)と記録的な大ヒットを記録した。新型コロナの影響で、人との距離を一定に保つソーシャルディスタンスが求められるなか、ゲームを通して友人たちと交流できる「あつ森」の注目度が高まったとみられる。足元でも新型コロナ感染者数が増加し、各都道府県で不要不急の外出を控えるなどの呼びかけが相次いでいる。これから夏休みシーズンとなるが、帰省などを断念して「あつ森」で遊んで過ごす人が多くなるかもしれない。
「あつ森」以外のソフトでは、5月発売の「XenobladeDefinitiveEdition」が132万本、6月発売の「世界のアソビ大全51」が103万本と好調だった。また、7月に「ペーパーマリオオリガミキング」、10月には「ピクミン3デラックス」などを投入するほか、追加コンテンツとして「ポケットモンスターソード・シールドエキスパンションパス」の第2弾となる「冠の雪原」の配信を今秋に予定している。
通期業績予想に関して、会社側は減収減益見通しの期初計画(売上高が前期比8.3%減の1兆2000億円、営業利益は14.9%減の300億円)および、今期の販売目標(スイッチ1900万台、ソフト1億4000万本)を据え置いた。しかし、1Qの業績や販売動向などを勘案すると通期予想は保守的で2Q決算以降に上方修正する公算が大きいだろう。一部報道で今期のスイッチ本体の生産台数を2500万台程度(4月時点は2200万台)に引き上げると伝わったことも業績拡大の追い風になるとみられる。株価は7月7日に付けた年初来高値(5万1910円)突破をすると一気に騰勢を強める可能性が高そうだ。(QUICK Market Eyes 本吉亮)
<金融用語>
QUICKコンセンサスとは
証券会社や調査会社のアナリストが予想した各企業の業績予想や株価レーティングを金融情報ベンダーのQUICKが独自に集計したもの。企業業績に対する市場予想(コンセンサス)を示す。一方、「QUICKコンセンサス・マクロ」は、国内総生産や鉱工業生産指数など経済統計について、エコノミストの予想を取りまとめたものをいう。 QUICKコンセンサスを利用したものとして、QUICKコンセンサスと会社予想の業績を比較した「QUICK決算星取表」や「決算サプライズレシオ」、QUICKコンセンサスの変化をディフュージョン・インデックス(DI)という指数にした「QUICKコンセンサスDI」などがある。また、「QUICKコンセンサス・プラス」は、アナリストの予想対象外の銘柄に会社発表の業績予想などを採用して、国内上場企業の業績予想を100%カバーしたものをいう。