トヨタ自動車(7203)が8月6日に発表した2020年4~6月期の連結決算(国際会計基準)は、馬力と安心感を示す内容だった。4~6月期に営業損益で黒字を確保しただけではない。新たに開示した資料からはトヨタとレクサスの2ブランドに対する「自信」が透ける。
■マイナス幅が徐々に縮小
プレゼンテーション資料には、トヨタ・レクサスの回復シナリオが記されていた。4~6月期に両ブランドの販売台数は前年同期に比べ31%減った。今後のシナリオとして7~9月期に約15%減、10~12月期に5%減と徐々にマイナス幅が縮小し、年明けの21年1~3月期には5%増と販売台数がプラスに転じる見通しを示した。
これまでトヨタ・レクサスの両ブランドの販売台数は開示してなかったが、今回は期首時点で通期の想定販売台数が800万台だったことを明らかにしたうえで、あらためて830万台を計画していると公表した。
日野自動車(7205)やダイハツ工業を含むグループ全体の世界販売台数の見通しは910万台と、従来の890万台から20万台分を上方修正した。トヨタ・レクサスブランドを30万台増やすわけだから、それ以外のブランドは10万台の下方修正ということになる。
■レクサス伸びれば利益積み増し
トヨタは今回、未定にしていた21年3月期(今期)の連結純利益が前期比64%減の7300億円になりそうだと発表した。売上高にあたる営業収益は20%減の24兆円、営業利益は79%減の5000億円の見通しを据え置いた。自動車は価格帯の高い高級車の方が利益率が高い。レクサスブランドの販売が伸びれば、利益が上振れしてもおかしくはない。
6日、日本自動車販売協会連合会(自販連)が発表した7月の車名別新車販売台数(登録車、排気量660cc超)では2月に発売した「ヤリス」が1万4004台と首位だった。7月は「ライズ」と「カローラ」、「ハリアー」が上位4ブランドをトヨタが占めた。国内で売れるのはトヨタの車ばかり、といった具合だ。経営が迷走する日産自動車、四輪車が苦戦するホンダが4~6月期にそろって最終赤字になる中で、トヨタが見せた粘り腰を市場は前向きにとらえた。決算発表を受けた6日、トヨタ株は2%の上昇となった。
お家芸の「カイゼン」とともに、着実に「売れる車」を持つトヨタ。市場は業績の上振れ期待を徐々に膨らませていくかもしれない。〔日経QUICKニュース(NQN)中山桂一〕
<金融用語>
営業利益とは
損益計算書上において、売上総利益から販売費及び一般管理費を差し引いた利益のことで企業の営業活動から得られる利益。計算後、利益ではなく損失となった場合は、営業損失という。