日本株はレンジ相場から抜け切れない。足もとでは4~6月期決算を受けて1株利益(EPS)も減少傾向だ。押し目買い意欲の強さは伺えるものの、上値を切り上げる動きに乏しい。奇しくも、押し目買い意欲の強さが上値の重さに繋がる可能性もある。
決算発表ピーク到来、日経平均のEPSは落ち込む
7日金曜、664社の企業が決算を発表した。今週も、11日のソフトバンクG(9984)をはじめ、700社超の決算発表が予定されている。ただ、これまでに発表された企業決算は今期に過去最大の営業赤字になる見通しを発表した日産自動車(7201)や四半期として初の最終赤字転落・減配を発表したキヤノン(7751)など、多くの企業が新型コロナウイルスによる逆風にさらされている。日経平均のEPS(1株利益)も7日時点で971円(指数ベース)と、2017年2月の水準まで落ち込んだ。
10日、ダウ工業株30種平均は2万7791ドルまで上昇し、6月8日の戻り高値を更新した。一方、日経平均株価は6月9日の戻り高値(2万3185円85銭)にやや距離がある。米企業の決算について、ゴールドマン・サックスは7日付リポートで、「S&P500種株価指数は低水準の予想を上回る結果となった」との印象を示している。ゴールドマンの集計によると、S&P500の4~6月期EPSは前年同期比34%減だったという。この数字は市場予想の44%減、ゴールドマン予想の60%減を上回るものだった。予想を上回る4~6月期決算を受けて、ゴールドマンは2020年末のS&P500のEPS予想を115ドルから130ドルに上方修正している。
改善の兆しが見え始めた米企業に対し、日本企業の決算が完全に底入れしたと確信できるのは4~9月期以降にずれ込む可能性がある。
レバETFの売買に透ける逆張り・短期思考
加えて、押し目買い意欲の強さが上値の重さに繋がる可能性もある。3日、日経平均株価は前日比485円(2.2%)高と7月31日の629円(2.8%)安から大幅に反発した。東証が開示している上場投資信託(ETF)の個別銘柄保有状況を示す「インディカティブNAV・PCF情報」によると、「NEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信(日経レバ、1570)」の日経先物の買い建て枚数は7月31日から8月3日にかけて約4700枚も増えた。3日の日経平均株価終値2万2195円で換算すると、約1000億円になる。日銀のETF買い入れ1回分に相当する。日経レバの購入は「購入申込日の翌営業日」(交付目論見書)となっている。7月31日、日経平均株価が大幅に下落する中、日経レバに大量の買い付けがあったと推測される。対照的に、「NEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信(1357)」には約3000枚の日経先物の買い戻しが発生していた。日経平均株価が大幅下落する中、利益確定売りが発生したものとみられる。両ETFの日経先物の新規買いと買い戻しにより、約1600億円程度の買いが発生したことになる。
これらのETFのフローは逆張り的な要素が強く、4日に日経平均株価が378円(1.7%)高となった翌日には日経レバから約2500枚の売りが発生していた。株価指数が下落した際の押し目買い意欲が強いのと同時に、上昇した際の利益確定売り圧力も相応に強いことが示唆される。
日本株は業績期待で買われにくく8月の夏休み期間中で売買高が減少する中、短期的な値動きに左右される展開が想定されよう。押し目買い意欲は強い一方、高値での利益確定売りも相応に発生しそうだ。