ソフトバンクグループ(9984)が8月11日にオンラインで開催した2020年4~6月期連結決算の説明会では「株主価値」「ビジョン・ファンド」、傘下の英半導体設計会社「arm(アーム)」などが焦点だった。説明会の内容をテキストマイニングし、分析した。孫正義会長兼社長は、純利益よりも投資による評価額を重視すると強調している。
4~6月期の純利益は、前年同期比12%増の1兆2557億円だった。保有資産の現金化に伴う売却益などが利益を押し上げ、20年4月の米携帯大手スプリントとTモバイルの合併に伴う一時的な利益も計上した。
説明会で孫会長は、ソフトバンクGは投資会社に変身を遂げた以上、売上高や当期純利益は「本当に重要な指数なのかと疑問」だと指摘した。保有する株式価値の合計から純負債を除いた株主価値こそが投資家にとって大切な指標だと繰り返した。
ソフトバンクGの株主価値は、8月11日時点で保有している株式の評価額である27.5兆円から直接返済する義務がある純負債3兆円を差し引いた24.4兆円だと説明した。ソフトバンクGの時価総額は13兆円前後だ。つまりソフトバンクGの株価は大きくディスカウントされた状況であると強調した。
1~3月期に約1.1兆円の評価損を計上したビジョンファンドは約3000億円の評価益に転じた。投資先企業の上場が増えているという。
アナリストやマスコミからは「アーム」にも強い関心が集まった。今後は5G(次世代通信規格)の広がりでスマートフォン向けに従来より単価の高い半導体チップが伸びると見込まれる。すでに多くの会社がアームの次世代チップについてライセンス契約し、開発に入っていると説明した。
米アマゾン・ドット・コムのクラウドサービス「AWS」がアームのチップに依拠した設計に「一気に変わってき始めた」と話し、競合他社でもアームのチップへの置き換えが起こるとして、成長への期待を示した。説明会ではアームに関して株式の再上場や第三者への売却などさまざまな選択肢を検討していると改めて語った。
決算を受けた12日、ソフトバンクG株は売られ、3%安の6192円となった。13日は切り返し7営業日ぶりに反発した。
(QUICK Market Eyes 阿部哲太郎)