17日~20日の日程で米民主党が全国大会を開催している。野村証券は20日付リポートで、18日に選挙公約が採択されたが、経済政策はこれまでにバイデン候補が発表したものに沿ったもので、「景気刺激的な政策と抑制的な政策が混在する内容であり、発表後の金融市場の反応限定的だった」と指摘した。
■金融規制の強化
選挙公約には新たに明らかになった経済政策の詳細も含まれており、税制に関しては、相続税の増税と富裕層の所得税の課税逃れの是正を主張しているという。具体的な措置としては高所得者に対して、株式の長期保有の場合にも、インカムゲイン、キャピタルゲインの課税率を引き上げて所得税率と同率にするバフェット税を導入するものと予想され、「株式市場で、インカムゲイン、キャピタルゲインの課税率引き上げを警戒する可能性がある」との見方を示した。
次に、金融規制強化に関してはバイデン候補のこれまでの発言で詳細が明らかにされていなかったが、オバマ前政権時代に制定された金融規制のドッド・フランク法の強化の他、商業銀行業務と証券業務とを分離するグラス・スティーガル法の復活を主張しており、「実行された場合に、金融機関の事業に影響するものと見られる」と指摘した。
■中国への制裁は…
また、通商政策については選挙公約で、トランプ政権が課した制裁関税を大統領就任後ただちに撤回するとした。制裁関税議会を通さず、大統領令で撤回できるため、「就任後100日以内に実施する政策の一つになるだろう」との見解を示した。この制裁関税の即時撤回は、中国経済にとって望ましいもので、中国もこれに応じて報復関税を取り下げるとみている。一方で、選挙公約で、中国の不公正な貿易慣行(為替操作、企業への政府補助金、知的財産侵害、サイバー攻撃)の阻止を目指すとしており、トランプ政権の指摘とほとんど変わりがない。人権や安全保障の面で中国に譲歩しないことも繰り返し主張しており、香港の自治侵害に関しては、当局者、金融機関、企業などへの制裁を完全に実行するとしており、「特に、金融機関に対する制裁実施には、金融市場への影響が考えられるため、注意が必要だろう」との見方を示した。(QUICK Market Eyes 川口究)
<金融用語>
ドッド・フランク法とは
「Dodd Frank Wall Street Reform and Consumer Protection Act:ウォール街改革、および消費者保護に関する法律」の略称で2010年7月に成立した米国の金融規制改革法。 2008年、リーマン・ブラザーズの破たんを契機として発生した世界的な金融危機を教訓として、金融取引の規制を強化し、金融機関の肥大化を防止するためにオバマ大統領が提唱し、制定された。