状況は5月から特に変わっていない。経済再開期待と政策サポートを追い風に、S&P500種株価指数はしばらくは横ばい圏での推移が続くだろう。
■アップサイドリスク
株価のアップサイドリスクは、新型コロナウイルスの感染者数が増えているものの、ロックダウンには至らず、経済にブレークを掛けるほどに至らないことだ。3~4月とは異なり、死亡者数も減少傾向にある。良くも悪くも新型コロナとの付き合い方に慣れることで、感染拡大が経済を下押しするリスクも低減する可能性がある。ただ、ニュージーランドのように再度ロックダウンに踏み切るケースもあるため、新型コロナリスクは依然として存在する事には留意したい。
また、米連邦準備理事会(FRB)による新たな金融政策指針の導入も、株価のアップサイド要因だ。FBは現在、政策金利を長期間低位に抑えることで金融緩和効果を高める「フォワード・ガイダンス」の強化を検討している。これにより、1~2年程度は金利が低位で安定すると見られる。イールド・カーブがブル・フラットニング化することで株価の割引率が低下。将来キャッシュフローが上昇することで1株利益(EPS)が増加する。これは、成長著しいグロース株優位の継続に繋がるだろう。
市場では9月米連邦公開市場委員会(FOMC)でのフォワード・ガイダンス強化が予想されているが、9月で見送られたとしても、遅くても年内にはFRBによる何らかのアクションが見込まれる。
■ダウンサイドリスク
ダウンサイドリスクは政策サポートがなくなることで消費が伸び悩むことだ。日米ともに6月は消費が伸びたものの、消費関連の経済統計は給付金の効果がはく落する8~10月にかけて改善に一服感が生じる可能性がある。また、消費関連の統計に限らず、その他の経済指標も8月は鈍化傾向が鮮明になろう。
米大統領選は株式市場にとって、そこまで大きな調整要因にはならないと考えている。民主党のバイデン候補が勝利した場合でも、足もとの経済状況を考慮して、すぐに格差拡大を是正するための法人税率を引き上げなどといった政策は取られないとみる。民主党の方が経済対策パッケージが大きいのもポジティブだ。
年内の日経平均は、下値目途は企業業績が重荷となることで2万1000円、上値目途は上述したアップサイドシナリオが実現することで2万3000~4000円程度を想定している。(QUICK Market Eyes 大野弘貴)