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明日が最終日の8月の株主優待、小売りに外食・・・豊富な選択肢の注意点は?

8月優待銘柄の権利付き最終売買日が27日となっている。8月優待銘柄は買い物金額から半年に1度、返金してもらうことができる人気の優待を実施しているイオン(8267)を筆頭に、小売企業がずらりと並ぶ。外食も含めると全体の6割弱を占める。もっとも、これらの業態は新型コロナウイルス感染症の影響で、明暗がくっきりと出た顔触れでもあり、優待だけに目を奪われるのではなく、業況も改めてチェックしておきたい。

■利回り高めは赤字予想企業

8月末を基準日とする優待銘柄のうち、小売り・外食企業(59社)で今期最終損益の予想を見ると、非開示が23社、赤字予想が15社に対し、黒字予想も21社ある。うち8社は最終増益の見通しだ(図1-1、2)。

※図1-1:8月優待の小売り・外食企業のうち最終黒字予想の企業

※図1-2:今期最終赤字予想の小売り・外食企業

黒字予想企業と赤字予想企業で優待利回りを比べて見ると、利回りが高めなのは赤字予想の企業が多かった。黒字予想の企業は株価が相対的に堅調であることも一因だろう。赤字予想企業の中でも利回りが最も高かったカジュアル衣料のマックハウス(7603、ジャスダック)は、2月末と8月末を基準日に、100株の保有で1000円相当の優待券に加えて20%割引券を5枚、通販専用の優待券を5000円分(1000円分を5枚)贈呈している。優待券だけで総額6000円を超える計算だ。最低投資単位も10万円以下と投資しやすい水準にある。ただ年初来の株価下落率は3割に達し、今期も最終赤字予想であることを踏まえると当面は株価浮上のきっかけには乏しいことは、覚悟する必要があるだろう。

■黒字かつ増益見通しは生活必需品関連

今期最終黒字の予想、なおかつ増益見通しの顔触れにはユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(3222、U.S.M.H)やリテールパートナーズ(8167)などの食品スーパー、雑貨や日用品など生活必需品関連の強さが光る。

これらの食品スーパーで目立つ優待は商品券で、利回りで見れば決して高くはないものの、日常の生活の中で使えるという点で利便性が高いことが魅力だ。実店舗が利用条件となる場合は近隣に店舗がなければ使えないが、U.S.M.Hは優待品と選択できたり、リテールPTもギフトカードなどと選択できたり、エコス(7520)はお米が選べたりと各社対応している。

■赤字予想企業間の格差

一方、赤字予想の企業ではアパレル関連の企業や居酒屋などの外食が並ぶ。ただ、全企業が逆風下にある状況でもなくなりつつある。足元の戻りを見る上で月次動向をチェックすると、「ユニクロ」を展開するファーストリテイリング(9983)は緊急事態宣言が解除された6月、7月の既存店売上高(EC含む)は増加傾向を維持しているほか、アパレル商材以外の子供用品も扱うとはいえ西松屋チェーン(7545)なども回復傾向が続いており、健闘している企業もある。一方、6月は前年を上回っても、ライトオン(7445)やマックハウスの7月の既存店売上高は再び前年割れに転じており、売り上げ回復の足場は弱い印象だ(図2-1)。

※図2-1:主な衣料品・服飾品小売り企業の月次売上高

外食チェーンは持ち帰りのしやすさや店舗立地など、業態間で5月から格差が大きかった印象だ。ただし、6月・7月では同じ業態間でも生じている格差については、いかに強い固定客がついているかを示す材料として今後も注目に値するだろう(図2-2)。

※図2-2:主な外食企業の月次売上高

個人的には、これら健闘している企業については、かつて2014年ごろ「マイルドヤンキー」と称された、地元に根差した生活基盤を重視する人たちが好むとされる消費に注目が集まった際、名前が挙がった企業と重なる印象がある。マイルドヤンキーはあまり遠方まで出かけることがないことが消費行動の特徴に挙げられていたが、期せずして新型コロナによる行動範囲の狭まりが影響している面もあるのかもしれない。

いずれにしろ新型コロナがきっかけとしても、構造要因で課題を抱える企業は収益低迷の長期化を余儀なくされる可能性が高い。トップラインの低迷が避けられない中で不採算店舗の圧縮やオペレーションの見直しなどの取り組みが避けられないことは投資するうえで頭の隅に置きたい。

■優待見直し

また新型コロナをきっかけに優待見直しの動きも一段と進んでいる点も注意だ。8月に入って新設が4社、21日までに19社が変更や廃止を発表している(図3)。

※図3:8月に入って優待の新設・廃止・変更を発表した企業

廃止企業は配当を優先することを理由に挙げていることも多い。一方で8月優待銘柄の出前館(2484、ジャスダック)は20年8月期の配当を無配とする一方、優待で実質的な金額を増額した(100株保有の場合は3000円のTポイントから4000円分の優待券)。

新型コロナをきっかけに同社サービスを使ってみたという消費者も多いだろう。ただし、Tポイントは1度の注文で使えるポイント数に制限はなかったものの、優待券の場合は1回の注文で1枚(1000円)の利用が可能となり、制限がかかることになる。同社は優待の利用機会を増やす狙いとしているが、使い方がやや複雑になるため注意したい。QUICK Market Eyes  弓ちあき)

<金融用語>

優待利回りとは

投資金額に対する株主優待の割合のこと。株式を買った金額に対して、株主優待の価値がどれくらいあるかを数値化したもので、個人投資家が還元率の高い優待銘柄を見つけるための指標のひとつとなる。計算式は「優待利回り(%)=株主優待の価値(金額換算)÷投資金額×100」。一般的に数値が高いほどお得な優待とされるが、株価が下がることで分母である投資金額が減るため、優待利回りが高くなる場合もある。

著者名

QUICK Market Eyes 弓 ちあき


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