ファーストリテイリング(9983)株が快調だ。新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛や在宅勤務の普及によってアパレル崩壊、アパレル不況と叫ばれるなか次々と「攻め」の姿勢を打ち出し、売り上げを伸ばしている。目下のところ業界内で「敵無し」という評価が株価を押し上げる一因になっている。
■ファストリの強さ
ファストリ株は9月8日の東京株式市場で一時6万7400円と、3日に付けた年初来高値をまたも更新した。そんなファストリの強さが表面化したのが先週発表の8月の既存店売上高だ。「ユニクロ」の8月の国内既存店(直営店)の売上高は前年同月比で29.8%増と、驚異的な伸びを示した。
「ほかのアパレル各社が在庫の切り売りで耐えしのぐ守りの姿勢を固めた一方、ユニクロは有名アーティストなどとのコラボレーションや、『エアリズムマスク』など攻めの姿勢が導いた当然の結果」と小売業に詳しいフロンティア・マネジメントの山手剛人氏はみている。
ユニクロのTシャツ「UT」では8月、日本を代表するアーティスト、米津玄師さんとのコラボレーションが大きな話題を呼んだ。東京・銀座の旗艦店、「UNIQLO TOKYO」では多くの老若男女が買い求める姿があった。子どもたちには人気漫画「鬼滅の刃」とコラボしたUTも人気だ。6月に発売したエアリズムマスクは通気性を高めた改良モデルを新たに売り出すなどユニクロの余裕が見て取れる。
ただ、8月は春夏物と秋冬物シーズンの端境期。今年の冬物の動向を見極める必要はありそうだ。時間の経過とともに価値が低下しがちな流行商品を抱える業界のなかで、ユニクロには夏はエアリズム、冬は「ヒートテック」といった定番商品が心強い味方になる。コロナ禍でも攻めの姿勢を打ち出せる豊富な手元資金の下支え役にもなっている。「ファストリの強さは財務や在庫管理を含めた『横綱相撲』と言え、他のアパレルとの比較では目立ったリスクもいまのところは浮かんでいない」と山手氏は話している。
■日経平均株価への寄与度
ユナイテッドアローズ(7606)やオンワードホールディングス(8016)、ワールド(3612)などライバルの株価が下降気味なのをみても、ファストリが市場で選別されているのが分かる。

ファストリ株は日経平均株価への寄与度が大きい側面もある。寄与度の大きい銘柄では足元でソフトバンクグループ(SBG、9984)が米ハイテク株安に押されて下落している。「機関投資家や資金力のある一部の個人投資家がSBGの持ち高を減らすかわりに、ファストリやファナック(6954)の買いを増やしている」(国内ネット証券の日本株担当者)という動きもある。
仮に相場が大崩れすれば、ファストリ株も売りを浴びる可能性はある。それでもユニクロの輝きが増しているのは確かで、個社としての評価が株価を支える場面も増えてくるかもしれない。〔日経QUICKニュース(NQN)尾崎也弥〕
<金融用語>
寄与度とは
統計値の変化に対して各構成要素がどれだけ影響(寄与)しているかを数値で表したもの。 計算式は 寄与度=[各構成要素データの増減(今回値-前回値)]/[全体データの前回値]×100 となる。