個人投資家は日本株に強気姿勢だ。信用取引の買い残高が増加傾向にあるほか、強気型の上場投資信託(ETF)の売買が増加している。個人投資家は日本株の下値の堅さに自信を深めているように映る。
■押し目買いか
信用取引の買い残高の増加が続いている。東京証券取引所が9月8日に発表した4日申し込み時点の信用取引の買い残高(東京・名古屋2市場、制度信用と一般信用の合計)は2兆3521億円と、3月6日時点(2兆3721億円)以来およそ半年ぶりの高水準となった。増加は3週間連続で、8月24~28日の週は日経平均株価が37円安と小幅な下落にとどまったものの、28日午後に安倍晋三首相が辞任の意向を固めたとの報道が伝わり日経平均は一時600円超下落する場面があった。8月31日~9月4日の週は、週間で322円高だったが、4日には米株急落を受けてハイテク株を中心に売りが膨らみ、下げ幅が300円超に達する場面もあった。相場急落を受け短期的なリバウンドを見込む個人投資家は押し目買いを入れた様子がうかがえる。
弱気型ETFといわれるNEXT FUNDS 日経平均ダブルインバース・インデックス連動型上場投信(NF日経ダ、1357)を強気型といわれるNEXT FUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信(NF日経レバ、1570)の日々の売買高で割って算出した比率の推移からは、6月中旬以降は上昇基調だったが、8月に入ると下落基調となっており、日本株の下値の堅さに自信を深めたように映る。
■ネット証券でも
ネット証券の8月の売買代金をみても、auカブコム証券(旧カブドットコム証券)が一日平均で前月比12%増、松井証(8628)が同4.6%増、マネックス証券が同1%増と個人投資家の売買が活発だった。「7月は3月以来、4カ月ぶりに日経平均が下落したことから8月に押し目買いが入りやすかった。現物株の売買においては外国人投資家と個人投資家とは買い越しと売り越しが逆の関係となりやすく、個人投資家のNF日経ダへの投資も活発と言える一方、新興株やNF日経レバへの投資も旺盛で、強気な姿勢がうかがえる」(国内証券マーケットアナリスト)という。
■海外投資家も
日本株のトレンドを左右する海外投資家による買いがさらに日本株を押し上げる可能性もある。足元のドル建て日経平均株価は、24年ぶりの水準を上回っており、3日時点では終値で節目の220ドルを超え、高値水準を付けた。外国人投資家は現物株を今年1月~7月までおよそ4兆6000億円を売り越してきたが、8月は3559億円を買い越した。「本来であればドル建ての日経平均株価が数十年ぶりの高値をつけていることは利益確定売りを促す契機になるとみられるが、米国を中心に低金利環境が長期間に渡って継続することが見込まれる中、新型コロナウイルスの感染動向やワクチン開発の進展具合から鑑みてコロナ禍が底を通過したと映るのであれば、経済環境の持ち直しを確認するにつれて見直し買いも入りやすくなるのではないだろうか」(国内証券ストラテジスト)との声が聞かれた。
(QUICK Market Eyes 川口究)
<金融用語>
ストラテジストとは
投資戦略を設計する「立案者」のこと。 経済の動きから産業・企業の動向、需給要因まで、様々な視点から投資環境を分析し、投資方針を提供する。