【QUICK Market Eyes 大野 弘貴、片平 正二、池谷 信久】菅義偉新首相の下で新たな内閣が動き出す。前政権からの留任組が多く変わり映えに乏しい陣容に見える中で市場はどう受け止めたのか―。

菅新政権、独自色は河野行革相、衆院選後の注目は金融担当相＝野村証券

野村証券は16日付のリポートで、菅内閣の人事の評価として「独自色は河野行革相、衆院選後の注目は金融担当相」と指摘した。リポートでは「今回、『構造改革』政権としての独自色が出ている点を挙げれば、河野太郎氏の行政改革・規制改革担当相への登用だろう。河野氏は現在防衛相だが、自民党の行政改革本部長を２回（14年、16年）、また安倍政権下で規制改革担当の特命大臣も務めた『改革派』であり、今回の総裁選への出馬も取り沙汰された『首相候補』でもある」と指摘。今回の職務と直結しないとしながら、「河野氏は17年４月自民党行革本部長の立場で、日銀が異次元緩和の出口論を早期に始めるべきとの提言を官邸に提出しており興味深い」とも指摘した。

その一方で、地銀再編を示唆する菅新政権の金融担当相に関しては、「金融担当の特命大臣であるが、今回人事では麻生氏が留任した。同氏は12年12月の安倍内閣発足以降同職に就いており、また現在は財務相との兼任である。ここからは金融再編が加速するとのメッセージは伝わってこない。選挙後に同ポストの交代があるのか要注目だ」と指摘。2002年に民間人の竹中平蔵氏が小泉政権下で登用され、「竹中プラン」に沿って不良債権処理と金融再編を加速させた経緯を紹介しつつ、「確かに政治的しがらみの薄い民間人の登用は、改革推進の強いメッセージになり得る。一方で政治基盤がぜい弱なため、様々な抵抗勢力が現れる」とし、民間人の重要ポスト起用が難しいともみていた。

「内閣人事は早期解散含み、補正予算は年末に」=SMBC日興

菅政権の閣僚人事についてＳＭＢＣ日興証券の森田長太郎氏は「想定以上に前政権からの残留が多い人事となった」と指摘。総選挙後に「菅色」を出した人事を改めて行うのだろうと「早期解散含みとの解釈にはなりやすい」と言う。

債券市場が材料視すべき点としては、「言われているような10月中旬解散のスケジュールとなれば、本格的な補正編成は通常通り年末になるという点」だという。但し、「解散を封印させるようなウイルス感染の再拡大の有無などは注意深く見ていく必要はあろう」とも述べていた。

「年内解散・与党勝利であれば日本株にポジティブ」＝JPモルガン

ＪＰモルガン証券は16日付リポートで、第一次安倍政権で総務大臣を務めた経験のある菅首相は「規制改革志向が強い」とし、「改革色の強い政策を体系的に打ち出せば、海外投資家を中心に株式市場で好感される材料になる」との見方を示した。また、今後の焦点は菅新首相が「どのタイミングで解散・総選挙を実施するか」であるとも指摘し、「仮に年内に解散総選挙が実施され、与党が勝利を収めるのであれば、長期安定政権への思惑から日本株にとって好材料」との見方も示された。

経済政策についての詳細は今後順次打ち出されていくことになるとしつつも、言及されているデジタル庁の創設、デジタル化の推進や地銀再編、携帯電話料金の引き下げなど、現時点で明らかになっている業種別影響として「デジタル化の推進によってＩＴサービスやキャッシュレス決済関連の銘柄にポジティブ、地銀再編が金融にポジティブ」とした一方、「通信にとっては逆風の環境、社会保障改革が医療費抑制、薬価引き下げにつながるようであれば医薬にとってもネガティブ」との見方を示した。