【QUICK Market Eyes 大野弘貴】一人勝ちの様相を強めてきたハイテク株が曲がり角に差し掛かっている。ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数は年初来高値をつけた9月2日終値から17日終値まで9.5%下落した。右肩上がりで上昇してきたナスダックだが、足もとでは投資資金の性質にも差が生じている。今後の値動きは波乱含みとなりそうだ。
■上昇続いたナスダック市場
3月下旬以降、騰勢を強めてきたナスダックの中でも特に上昇が目立ったのが時価総額の大きい銘柄群だった。新型コロナウイルス禍で先行き不透明感が強まる中、財務基盤の安定性が評価された点もあるが、在宅勤務の広がりなどDX(デジタルトランスフォーメーション)を追い風に業績を拡大できた側面が大きい。中でも、コロナ禍の勝ち組として挙げられるのがアップル、マイクロソフト、アマゾン、フェイスブック、グーグル親会社のアルファベットの5社、通称「GAFAM」と呼ばれる企業群だ。4~6月期決算は広告収入が減少したグーグルを除いて残り4社はいずれも増収を確保した。S&P500種株価指数の時価総額に占める5社の時価総額比率は昨年末の18%から8月下旬には24%まで上昇した。
GAFAMの上昇恩恵をより享受することが出来るナスダック100指数(ナスダック市場の時価総額上位100社で構成)は、3月下旬以降の上昇率がナスダック総合より大きかった。野村証券とTDセキュリティーズの分析によると、CTA(商品投資顧問)のナスダック100先物ポジションは3月以降、一貫して上昇していた。コロナ禍における勝ち組に資金が集まる中、モメンタムトレードがこの上昇を加速させた可能性が高い。加えて、8月にはソフトバンクG(9984)や米個人投資家のコール・オプションの買いも相場上昇を増幅させたとみられる。ゴールドマン・サックスの10日付リポートによると、プット・コール・レシオ(プットの建玉をコールの建玉で割って算出)は14年初以来、6年半ぶりの水準にまで落ち込んでいた。
ゴールドマンは顧客のコールオプションのポジション増に伴い、ディーラーが上げ相場でデルタの上昇分をヘッジし、下げ相場で売りを入れるガンマショートのポジションが発生していたと指摘した。「一部ディーラーでは、個別のハイテク株オプションのデルタヘッジを、個別株では流動性が薄いため、ナスダック指数で疑似的に代替していた」(外資系証券トレーダー)との指摘も聞かれた。過熱したオプション取引も指数の上昇に寄与したと見られる。
■調整局面へ
しかし、年初来高値を付けた2日以降、ナスダック総合指数は調整局面を迎え、これまで下値支持として機能した25日線が一転して上値抵抗となった。17日には50日線も割り込んだ。

直近の調整はハイテク株同様、コロナ禍における株価上昇の象徴ともされたテスラの株価が、S&P500への組み入れ見送りをきっかけに急落したことによるセンチメントの悪化や、新型コロナウイルスのワクチン開発の進展によるバリュー株へのローテーションなどの理由が挙げられる。
■資金流入見られるTQQQ
ただ、この調整局面において、一貫してナスダック100への資金流入が見られるアセットがあった。プロシェアーズが運用するETF、ウルトラプロQQQだ。同ETFはナスダック100指数の日次運用実績の3倍の値動きとなるよう運用されている。17日、ナスダック100指数は1.48%安となったが、TQQQは4.6%安だった。FactSetによると、同ETFには8月31日以降、一貫して資金が流入している。

また、資金流入に伴い、TQQQの受益権口数も直近では急増している。16日時点の運用資産残高(AUM)は約83億ドルと、日本で代表的なレバレッジ型ETFである「NEXTFUNDS 日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信」(NF日経レバ、1570)の3倍以上の運用規模だ(NF日経レバのAUMは16日時点で約2055億円)。これにTQQQは3倍のレバレッジがかかるので、実質的な運用額は日本円で2兆円を上回る。

■レバレッジ型ETFに注目
野村証券の高田将成クロスアセット・ストラテジストは17日付リポートで、逆張り勢の押し目買い参戦レベルはナスダック100指数で1万820~1万1600(17日終値:1万1080)と推察した。
一方で、ある外資系証券のトレーダーは「アメリカでも足もとでは個人投資家中心に、日本で流行ったレバレッジ型ETFがプレゼンスを拡大している。これらETFはオプション取引同様にガンマショートを増幅させる。米取引時間でも、引けにかけて思いもよらない値動きになる傾向が今後も多く見られそうだ」と指摘。また、別のトレーダーは「2日の年初来高値以降、TQQQなどを通じて個人投資家などの押し目買いが多く入ったと見られる。特にTQQQは相場下落時にペイントレードになりやすい」と指摘した。
足もとのナスダック市場は、現物株中心の売買からレバレッジの効いた取引が存在感を増しているとも言える。今後は、今まで以上に値動きの激しい展開となる可能性もありそうだ。
<金融用語>
レバレッジ型ETFとは
金融商品取引所に上場している指数連動型投資信託(ETF)のうち、日経平均株価などベンチマークとなる株価指数の値動き自体に連動するのではなく、株価指数の日々の値動きを2倍や3倍などに増幅した値動きに連動した運用を行う投資信託。 株式先物を活用して運用するのが一般的であり、日々、短期金融商品(短期金融資産)を証拠金として組み入れ、運用資産額の2倍や3倍の先物を買い建てるのが運用の基本形。仮に倍率を2倍とすると、2倍となるのは日々のリターン(変動率)であり、前営業日と比べた当日のレバレッジ型ETFのリターンが株価指数のリターンの2倍となるよう運用を行う。そのため、一年間など投資期間を広げるとレバレッジ型ETFのリターンは株価指数のリターンを2倍した値とのズレが拡大していく。さらに、株式相場が膠着し株価指数自体はほぼ変わらずリターンが小幅プラスだったとしても、同期間のレバレッジ型ETFのリターンは最終的にマイナスになるケースもあり得る。 こうした特性を踏まえ、一般的なETFはその低い運用コストから長期保有でメリットが顕在化するのに対し、レバレッジ型ETFは長期保有に向かず、相場観に基づいた短期投資向けのETFとして位置づけられている。 レバレッジ型ETFの市場価格は投資対象の先物の値動きにも左右され、株式相場が急変すると株価指数先物がストップ高やストップ安となり、株価指数のリターンの2倍に対応する価格からかけ離れた値段が付くこともある。 ベンチマークとなる株価指数とは反対方向に動き、利益・損失の関係が日々逆になる「インバース型上場投資信託」とセットで上場しているのが一般的である。