24日の日経平均株価は続落した。前日の米市場でハイテク株が軒並み売られた流れを嫌気した。グロース株に類されるハイテク株が不安定な値動きを続ける一方、日本市場ではバリュー株への関心が日増しに高まっている。また今後のマネーフローとして債券から株への「グレートローテーション」への期待も高まっているようだ。
■物色はバリュー・リバーサル優位へ=JPモルガン
JPモルガン証券は9月23日付の「日本株ベストアイディア」のリポートで、日経平均株価が2万3000円前後で方向感に乏しい一方、「物色はバリュー・リバーサル優位へと転換しつつある」との見解を示した。その上で「今後は、日本株がレンジを上抜ける可能性、およびバリュー・リバーサルの流れが強まる可能性を視野に入れておきたい」としつつ、「バリュー株とグロース株のバリュエーション格差は依然として大きく、52週移動平均に対するかい離度で見てもバリューが割安水準である。また、バリュー株とグロース株の相対株価は、長期金利との過去の相関に照らしてもバリューのアンダーパフォームが顕著との姿にも変わりはない」などと指摘。バリュー・リバーサル優位の相場環境が続くとみていた。
なお、バリュー、リターンリバーサルの動きが強まるとの見方に基づき、コロナ禍の中で出遅れ感が強い銘柄を中心に選定した9月のターゲット銘柄は下記の通り。
コード | 銘柄名 |
4901 | 富士フイルム |
5401 | 日本製鉄 |
7453 | 良品計画 |
8309 | 三住トラスト |
8591 | オリックス |
■低ボラかつ高配当利回り企業に注目=大和
大和証券は24日付リポートで、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)では2023年末までゼロ金利政策を継続する方針が示されたほか、市場の政策金利予想も23年年央までゼロ金利で横這いとなる中、こうした環境下で、「債券で運用されている資金が運用難から株式に移動する動き(グレートローテーション)が顕著になってくる可能性があろう」と指摘。債券から株式に移動した資金は、安全性と利回りを相対的に重視し、低ボラティリティかつ高配当利回りの株が選好される可能性があるとして、セクター別の実績配当利回り、過去3年間の月次騰落率の分散などを示した。高配当利回り、低ボラティリティの両方が上位3分の1以上に入ったセクターには建設業、卸売業がありであった。コロナ禍での消費行動の変化やコロナ後の資源価格の上昇を見込み、業績面でも魅力があるとみている。
その一方で、配当利回りが上位3分の1に入り、ボラティリティが上位3分の1に入らないセクターには、銀行業、保険業、証券・商品先物取引業等の金融業が並び、ゼロ金利政策の長期化観測のもと「米債券利回りのボラティリティ指数は過去最低水準まで低下している。米長期金利変動から株価が相対的に影響を受けやすい銀行業や保険業の株価のボラティリティは今後低下する可能性があろう」と指摘した。高配当利回りかつ低ボラティリティのセクターとして、今後選好される可能性のある建設業、卸売業、銀行業、保険業に属する企業でTOPIX500採用され、かつ上位の銘柄を挙げた。以下に一部抜粋。
コード | 銘柄名 | 予想配当利回り | 株価騰落率 分散 |
建設業 | |||
1820 | 西松建 | 0.48% | 0.48% |
1878 | 大東建 | 4.21% | 0.57% |
1812 | 鹿 島 | 4.18% | 0.37% |
卸売業 | |||
8053 | 住友商 | 5.34% | 0.47% |
8058 | 三菱商 | 5.20% | 0.43% |
8031 | 三井物 | 4.26% | 0.41% |
銀行業 | |||
8304 | あおぞら | 6.70% | 0.49% |
8316 | 三井住友 | 6.13% | 0.55% |
7182 | ゆうちょ | 5.78% | 0.24% |
保険業 | |||
8725 | MS&AD | 5.08% | 0.35% |
8630 | SOMPOHD | 4.11% | 0.42% |
8766 | 東京海上 | 4.10% | 0.28% |
(QUICK Market Eyes 片平正二、川口究)
<金融用語>
リターン・リバーサルとは
リターン・リバーサルとは株式の「逆張り」投資手法のことを指す。株価が下がった銘柄はいずれ反発し、値上がりした銘柄は下落することが多いという経験則に基づく手法。 この手法を投資信託などのポートフォリオに応用する場合は、一定期間での組入銘柄の騰落率を計測し、騰落率が大きい銘柄ほど組入比率を下げ、騰落率が小さい銘柄ほど組入比率を上げるよう銘柄の配分比率を変えるリバランス(配分調整)を行う。投資信託運用手法の「等金額投資」はこの手法に基づいている。反対に、勝ち馬の勢いに乗る格好で値上がり銘柄を買い進むのを「順張り」と呼び、トレンド・フォローと呼ばれる運用手法が採用している。 リターン・リバーサルの投資効果は、学術理論上、異常(変則)値を意味する「アノマリー」として扱われている。アノマリーとは理屈では説明のつかない事象のことで、株式の値動きはランダム(不規則)であり、特定の手法によって儲かるような機会が放置されることはないという「効率的市場仮説」に反した事象とみなされている。リターン・リバーサル(逆張り)、トレンド・フォロー(順張り)のどちらが有効かについては株式相場の局面次第で異なってくる。