【QUICK Market Eyes 大野 弘貴、川口 究】トランプ米大統領の新型コロナウイルス感染は株式市場にとって大きな不透明材料の1つに変わりはない。大統領選で民主党のバイデン候補が優勢との流れも続いているが、その「勝ち方」次第で株式投資のシナリオが変わるとの見方が出ている。
■米民主党のスイープ確率は上昇、バリュー・シクリカルの上昇に寄与か=エバコア
エバコアISIは4日付リポートで、「投資家にとって米大統領選は依然として最大のリスクであることに変わりはないが、一方で、トランプ大統領を含めた多くの共和党議員が新型コロナウイルスに感染したことで、次の感染の波に対する懸念が高まっている」と指摘。足もとでは治療法と早期の感染発見により死亡率は低下しているものの、感染者数が増加することで、「政府による自己検疫と感染防止措置を通じて経済活動を遅らせる。また、米労働市場の需要の鈍化は、ウイルスに関連した経済成長の鈍化に拍車をかけるだろう」との見方を示した。
エバコアは短期的にみると、民主党がスイープ(大統領選に勝利し、両院も過半数の議席を獲得)する確率は上昇(5日朝時点で約57%)し、追加経済対策の成立可能性も高まっていることから、これらが実現することで近い将来、「バリュー株と循環株を大きく支えることになる」と指摘。一方で、財政面での合意が成立せず、民主党が圧勝出来なかった場合は「追加的な資金がゼロになり、グロース株が上昇する可能性もある」との見方を示した。
また、景気刺激策がどうであれ、「住宅市場の好調、実質金利のマイナス、貯蓄率の高さ、キャッシュ・リターンの安定などを背景に、景気回復は拡大を続けている」とも指摘。加えて、「企業の信用力は改善しており、中国の新規融資の伸びは高く、消費者信頼感は急上昇しており、米サプライマネジメント協会(ISM)景況感指数からは、在庫の新規受注は堅調な状況が今後も続くことが示唆されている」とし、「投票後数日以内に大統領選の勝者が判明する場合は、ファクターと株式リターンの分散が拡大することが予想される」との見方も示している。
■追加の経済対策、米大統領の新型コロナ感染は立場を変える隠れ蓑か=レイモンド・ジェームズ
トランプ氏のコロナウイルス感染に関しレイモンド・ジェームズは2日付リポートで「すでに中止された選挙集会以外に、トランプ氏の診断がどのような影響を与えるかを判断するには、まだ時期尚早だ」と指摘していた。一方、下院が1日夜、2兆2000億ドルの規模の法案を可決した追加の経済対策を巡り、その影響に関して、「これは主に選挙前に交渉が終わると見られているが、トランプ大統領の新型コロナウイルス診断は本当にワイルドカードになり得るし、取引の触媒になるかもしれない。結局のところ、立場を変えるときの言い訳に使われる可能性や隠れみのを持つことにもつながる」との見方を示した。また「マコネル上院院内総務はこれまでのところ、広範な協議からほとんど姿を消しており、私たちは彼の関与の増大を、上院の反対勢力が緩和しつつある兆候として注視している」といい、現時点では上院共和党の反対姿勢を強さを強調した。
議会選挙で接戦が予想される共和党の候補たちが、追加の経済対策に対する上院の行動不足を疑問視しているという報告が出始めており、「接戦となっている上院議員に何らかの補償を提供する必要性(があること)と、10月の会期中に残っている上院がトランプ大統領の最高裁長官指名を進めることは、上院の抵抗を和らげるための有利な条件として働くだろう」との見方を示した。