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CA100+が警告、日本企業含む161社に脱炭素移行計画を問う書簡(レスポンシブル・インベスター)

※レスポンシブル・インベスターのロゴ

気候変動に関するエンゲージメントを推進する投資家グループ「Climate Action 100+(CA100+、加盟500団体の運用資産総額は47兆ドル以上)」は、世界で最も環境に悪影響を及ぼしている上場企業161社の取締役会議長および最高経営責任者(CEO)宛てに書簡を送り、科学的根拠に基づく温室効果ガス排出量の削減目標に沿った「ネットゼロ(排出実質ゼロ)戦略」を策定するよう求めた。

CA100+がリストアップしている企業のうち、日本企業ではダイキン工業、日立製作所、本田技研工業、ENEOSホールディングス、日本製鉄、日産自動車、パナソニック、スズキ、東レ、トヨタ自動車の10社を含む。

CA100+は自らのエンゲージメント活動を後押しするため、「どの企業が排出量ネットゼロへの移行をリードしているか」を評価する手法を編み出した。

「Climate Action 100+ Net-Zero Company Benchmark」は、科学的根拠に基づく目標と設備投資計画の策定を含む30の指標に基づき各企業の気候変動対策の信頼性を判断し、何が「ネットゼロ目標に沿った」事業戦略の構成要素となるのか、1.5℃目標との整合性をどのように評価するか、について基準を示すものである。

CA100+の署名機関と複数の非政府組織(NGO=Transition Pathway Initiative、Carbon Tracker Initiative、2°Investing Initiativeなど)の協力を得てEYアドバイザリー・アンド・コンサルティングが開発したベンチマークによる評価結果は、2021年春以降セクター別レポートとして公表される。また、企業のリサーチと分析はFTSE Russellが行う。

CA100+は各企業のCEOに対し、投資家と協力して「低炭素化に向けたアクションプラン」を策定するよう呼び掛けており、これを各セクターが排出量ネットゼロ目標を達成するための指針としたい考えだ。

スペインの石油大手レプソルはRIが今年初めに開催した会議「DigiFest」で、英国国教会年金理事会の倫理・エンゲージメント部門のディレクターであるアダム・マシューズ氏からの質問に答えるかたちで、CA100+と協力して「石油・ガスセクターが排出量ネットゼロを実現するための基準を策定」することに同意した。これは、戦略の中でもとりわけカーボン・オフセットに向けた取り組みとなろう。

CA100+がエンゲージメントの対象としている161社は、世界の温室効果ガス排出量の80%を占めていると推計される。

ノルウェー最大の運用会社で、CA100+のメンバーでもあるストアブランドは先月、対象企業のうち5社(米石油・ガスメジャーのエクソンモービルとシェブロン、英豪系鉱山大手リオ・ティント、米ガス事業会社Southern Company、ドイツ総合化学BASF)が気候変動適応策を妨害するロビー活動を展開していることに業を煮やし、これらの保有株式を売却した。

現時点で、CA100+のターゲット企業のうち50社が遅くとも2050年までに排出量ネットゼロの達成を「目指す」意向を示している。だがCA100+の書簡は、こうした戦略の対象範囲を「バリューチェーン全体の排出量」にも広げ、排出量の削減目標を「世界の気温上昇を1.5℃に抑えるという科学的根拠に整合させる」ことを明確に求めている。

また、投資家が「企業が十分に野心的な目標を掲げている」と確信できるよう、各企業のCEOに「中期目標」を定めることも強く求めている。

Climate Action 100+ Net-Zero Company Benchmarkには以下の指標が含まれている。

  • 野心:企業が、(遅くとも)2050年までに温室効果ガス排出量ネットゼロを達成するという野心的目標を設定しているか
     
  • 目標:サプライチェーンの温室効果ガス排出量(スコープ1、2および3)の全てについて明確な短・中・長期目標が設定され、その内容が世界の気温上昇を1.5℃未満に抑えるという目標に整合しているか
     
  • 脱炭素戦略:企業が、自ら設定した野心的な温室効果ガス排出量削減目標を達成するための強力な脱炭素戦略を策定しているか
     
  • 資本調整:企業による炭素集約度の高い資産や事業への設備投資が、パリ協定の定める目標との整合性評価を行っているか
     
  • 気候変動適応策の支持:企業が気候変動施策を支持する意向を明確に打ち出し、そのための取り組みと情報開示を行うほか、自らの直接的・間接的なロビー活動がそうした意向に沿ったものだと明示しているか
     
  • ガバナンス:企業の温室効果ガス排出量削減目標(上記の2番目の項目を参照)の達成状況を監視する取締役会が有効に機能しているか、また達成度に連動した報酬体系を導入しているか
     
  • 公正な移行:企業が「公正な移行」の達成方法(従業員、地域社会、その他のステークホルダーへの影響を考慮した内容)に関する情報を開示しているか、それらを自らの移行計画に盛り込んでいるか
     
  • 報告:企業の気候変動リスクに関する全ての報告書が、気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に沿って作成されているか

また、上記の指標を補助するため、さらに22のサブ指標が参照されている。

※本稿は、レスポンシブル・インベスター(Responsible Investor)の掲載記事をQUICK ESG研究所が翻訳、編集したものです。同社は、ロンドンに拠点を置く、世界の機関投資家に向けた責任投資、ESG、サステナブル・ファイナンスを専門的に取り扱うニュースメディアです。

<金融用語>

エンゲージメントとは

エンゲージメントとは、「約束」、「取り決め」といった意味を持つ言葉であるが、ここでは機関投資家が企業に対して行う「建設的な目的をもった対話」のことを指す。投資家が、短期的なリターンを追い求めるのではなく、中長期的な視点で企業に働きかけることで、当該企業の持続的な成長と企業価値向上を促すことを目的とする。エンゲージメントの手段は、手紙、直接面談、役員との面談など。株主提案、議決権行使を含む場合もある。投資家エンゲージメントに際し、企業の経営戦略や事業計画を調査しておく。そのうえで企業に考えを伝え、対話をすることによってスチュワードシップ活動の責任を果たす。 一対一で行うエンゲージメントだけではなく、複数の投資家が協力して行う場合もある(協働エンゲージメント)。(QUICK ESG研究所)

<告知>

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