【QUICK Market Eyes 片平正二】8日の米恐怖指数のVIXは6.05%安の26.36で続落した。10月6日には一時30台に乗せたが投資家心理の不安感は株高を受けて後退している。しかし、VIX先物10月限と11月限のスプレッドは米大統領選挙の第1回候補者テレビ討論会後は高止まりし、8日は再び2ドル台に乗せてきた。VIX先物からは11月3日の米大統領選挙の投票日以降も相場が荒れる展開が警戒されているようだ。
■過剰な急変は起こらないだろう
JPモルガンは8日付のリポートで「必ずしも投票日に当選者が明らかになるとは限らない。ウィスコンシン、ミシガンなど最も転換する可能性が高い州のいくつかは、その日まで郵送による投票さえ処理しない。これは、広範な世論調査の証拠の中で、直接投票と早期投票の間に強い党派的な偏りがある可能性があることを示唆している」と指摘。
その上で「流動性がどのように進化する可能性があるかという問題がある」としながら、「事後的な流動性環境は、結果の遅れや異議申し立てによる過剰なオプション・プレミアムにとって特に重要である。2016年は急激にボラティリティが上昇したにもかかわらず、日中の価格変動はアルゴリズムが一貫して市場を作るのに充分な秩序だった」とし、2012年の大統領選挙時と比べ、2016年に高頻度取引(HFT)の比率が高かったことを指摘していた。
さらに「世界のオプション市場に反映されている。これは予測モデルと方向性が一致しており、今後の関係がより緊密になることを示唆している。郵送による投票を処理して集計する際の制約が州法によって強化されている州や、訴訟リスクが高まっている州など、注目に値する重要な州がいくつかある」としつつも、「2016年の経験は、驚くべき結果が生じた場合、流動性の状況が悪化したとしても、市場のミクロ構造は回復力を維持する可能性が高いことを示唆している」とし、「グローバル・オプション市場に織り込まれたイベント・リスクの割安化が期待され、公正であることを示唆している」と指摘。過剰な急変は起こらないだろうと冷静にみていた。
■環境関連投資を公約に掲げるバイデン氏
米選挙分析サイト、ファイブ・サーティー・エイトによると8日時点でバイデン前副大統領が選挙で勝つ可能性は84%となっており、算出以来の最高水準にある。
株式市場でもバイデン氏が優位との見方が続いており、ソーラー関連銘柄を投資対象とするインベスコ・ソーラーETF(TAN)は8日に一時77.50ドルまで上昇して連日で設定来高値を更新した。環境関連投資を公約に掲げるバイデン前副大統領が優位との見方からTANが強含む流れが続いている。同ETFはバイデン氏の世論調査と連動性があるとされる。環境エネルギー関連企業から算出されるワイルダー・ヒル・クリーンエネルギー指数も史上最高値圏にあり、米国市場で主力ハイテク株の戻りが鈍い反面、クリーンエネルギー関連銘柄などにバイデン・トレードの動きが散見されるようだ。米債市場でもトリプル・ブルーをはやして財政拡大思惑から金利上昇基調が続いており、米金利上昇に伴うバリュー株高が日本株を下支えするとの連想が働きそう。
<金融用語>
高頻度取引(HFT)とは
高速取引、ハイフリークエンシー・トレード(High Frequency Trading、HFT)とも呼ばれ、コンピューターが株価や出来高などの動きをミリ秒(1000分の1秒)単位以下の速度で判断し、超高速の自動発注を繰り返して大量売買する取引。ポジションの保有期間が極めて短く、取引頻度を高めることで資本回転率を上げ、高い収益をねらう。 株式や先物の市場の売買で大きな割合を占めており、相場を瞬時に変動させることもあることから、批判的な見方もある。