中国人民銀行(中央銀行)は市中銀行が人民元を売って外貨を買う為替予約の際に預ける「危険準備金」を10月12日から撤廃した。これまで元売り・外貨買いの為替予約をする際、銀行は残高の20%を強制的に人民銀に預ける必要があったが、ゼロにする。人民銀が足元の急激な元高をけん制したとの受け止めから、12日の上海外国為替市場で元相場は対ドルで一時1ドル=6.73元台前半と、9日の日中終値と比べて0.017元程度下落した。人民元高の流れが変わるきっかけとなるのか。市場関係者に聞いた。

■「米ドル安に呼応、中国の経済状況は無関係」
豊盛金融集団の黄国英・資産管理ディレクター
危険準備金の撤廃は中国国内の事情よりも米ドルの動向によるところが大きい。米ドルは中国が国慶節(建国記念日)の連休だった今月初旬に新興国通貨に対して弱含み、連休明けの上海外国為替市場でも急激な米ドル安・人民元高が進んだ。このため、このタイミングでの元高抑制措置の導入となった。
危険準備金は銀行にとって元売りのコスト増要因となる。措置の取りやめで元を売りやすくなるため、元高に歯止めをかける効果がある。ただ、理由はあくまでも米ドル安で、中国国内の経済状況に不安があるためではないとみている。
措置を受け、12日の人民元相場は対米ドルで大幅に下落しているが、影響は短期的で限定的なものとなりそうだ。昨今は米国の新型コロナウイルス対策や米大統領選の不透明感、米国の経済状況や経済対策への不安感などを背景に、米ドルに対する信用度が低下している。米ドルと人民元の金利差もなお大きく、人民元に買いが入りやすい相場環境だ。中国当局がさらに抑制措置を講じる可能性はあり、ピッチは鈍化するかもしれないが、方向性としては当面、対米ドルでは元高方向となるだろう。
■「中国経済回復に向け元高進行をけん制」
光大新鴻基の温傑ストラテジスト
前週末9日の上海市場で元相場は1ドル=6.69元台前半まで上昇し、2019年4月以来の元高水準を付けた。足元の急激な元高の進行は中国の輸出に向かい風となり、このところ堅調に回復してきた中国国内経済にも重荷となる。人民銀は危険準備金の撤廃を通じて元高進行をけん制し、元相場の安定を図ることが中国経済にとって最適だと判断したのだろう。
11月の米大統領選など、米国の政治・経済情勢には先行き不透明感が増している。オフショア(海外)市場では米ドルが他の主要通貨に対して下落し、人民元相場も短期的に元高・ドル安方向に進みそうな環境下にある。だが、上海市場で元相場が大きく上下に振れない限りは、人民銀は現状の金融政策を維持するとみており、長期的な元相場も安定的に推移するだろう。(NQN香港 桶本典子、川上宗馬)