【QUICK Market Eyes 片平正二】10月13日は20年7~9月期(3Q)の決算発表シーズンの皮切り役となったJPモルガン・チェース(JPM)が1.62%安、シティグループ(C)が4.79%安となり、金融株の下げが目立った。シティはリスク管理や内部統制の不備で規制当局に支払うとした制裁金4億ドルを含む費用負担が純利益を押し下げたことで下げもきつかったが、米大統領選挙でバイデン前副大統領が優位とみられる中、金融規制強化への警戒感から金融株が弱い流れが続いている。
■VIXは落ち着いている
米株安を受けて恐怖指数のVIXは3.98%高の26.07で続伸したが、ナスダック版恐怖指数のVXNが34.48と30台にあるのと比べて水準的には低い状態にある。S&P500指数が9月2日に付けた史上最高値(3580.84)にあと1.92%迫っているほか、VIX先物10月限と11月限のスプレッドは13日に1.80ドルで高止まりしており、米大統領選挙の結果に不透明感が残っている割にVIXは落ち着いていると言える。
■S&P500指数の目標値3600を維持
パイパーサンドラーは13日付のリポートで「勢いは依然として強気だが、買われ過ぎではなく、現在の上昇には余地があることを示している。S&P500指数採用銘柄のうち、テクニカルに買われ過ぎを示唆するRSIで70ポイント以上の銘柄は13%に過ぎない」と指摘。その上で、米株は懸念の壁を乗り越え続け、史上最高値付近で値を戻しているとしながら、「この1カ月間で、参加者の輪が広がり、参加者の幅が広がった。米国や欧州で新型コロナの新規症例が増加している一方、景気回復が減速しているように見えるためファンダメンタルズは依然として懸念されている。しかし、市場は今のところワクチン開発の進展に満足しているようで、選挙の前後には景気刺激策の合意があるだろう。我々は年末のS&P500指数の目標値3600を維持する」と強気の見解を維持していた。
JPモルガンは13日付のクロス・アセット・ボラティリティのリポートで米大統領選挙が3週間後に迫ったいま、テール・リスクを保護するためのコストはすべての資産クラスで高くなっているようだと指摘。ただアセットクラスの間においてはディスロケーションがおこるとみて、S&P500に連動するスパイダーS&P500ETFの3カ月物デルタプットの売りと、長期債を投資対象とするiシェアーズ20年+米債ETFの3カ月物デルタコールの買いの組み合わせなどを推奨していた。
S&P500は史上最高値圏で堅調だが、VIXに比べて日経平均VIの低下が際立っていることもあり、テールリスクに備えるならハイベータの日本株でヘッジする意味においても日経平均VI先物を買うのも一興かも知れない。
<金融用語>
RSI(相対力指数)とは
アメリカのテクニカル・アナリストのJ.W.ワイルダーによって開発されたテクニカル指標であり、オシレーター(振幅を測るもの)分析の一種。相場が上昇、下落のどちらの勢いが強いかを計測する。 具体的には、過去一定期間の上げ幅(前日比)の合計を、同じ期間の上げ幅の合計と下げ幅の合計(いずれも絶対値)を足した数値で割って、100を掛けたもので、0%から100%の範囲で推移する。上昇局面に入ると数値が50%以上で推移し、下降局面に入ると数値が50%以下で推移する。 短期的な相場分析では14日間のデータを使用し、RSIが70%以上であれば相場は買われすぎ、逆にRSIが30%以下であれば相場は売られ過ぎと判断される。