【日経QUICKニュース(NQN)宮尾克弥】コニカミノルタ(4902)株が実質的に1975年以来約45年ぶりの安値に沈んだ。新型コロナウイルスの感染拡大により、欧州の売上比率の高さが投資家の売りを促した。直近では政府が進める行政改革が業績の向かい風になるとして、投資家は押し目買いの手さえ引いている。
■外国人投資家離れ
同社の年初からの下落率は10月15日終値までで60%超に達した。同業のキヤノン(7751)とリコー(7752)の40%超安、ニコン(7731)の50%超安を上回り、投資家離れは深刻だ。
持ち高を大きく減らしているのが外国人投資家だ。同社の所有者別株式分布状況によると外国人の比率は15年3月末に45%だったが、その後は圧縮する動きが続き、20年3月末時点は約28%まで低下した。
直近でも売りに歯止めがかからない。QUICK・ファクトセットによると、ブラックロックなどの複数の海外投資家が6~7月にコニカミノル株の持ち高を落としていたことが分かった。市場からは「新型コロナの収束は遠く、株価上昇のカタリストが見当たらない」(国内証券の投資情報担当者)との声が出ている。
※ブラックロック・ファンド・アドバイザーズのコニカミノルタ株の保有数推移(QUICK FactSet Workstationより)
※バンガード・グループのコニカミノルタ株の保有数推移(QUICK FactSet Workstationより)
■新型コロナ再流行の懸念
ビジネス機械・情報システム産業協会によると、15年は約9700億円だった主要な日本企業の複写機・複合機出荷額は、19年に約8300億円に減少した。コロナ禍は世界でペーパーレス(デジタル化)を加速させる。SMBC日興証券の桂竜輔シニアアナリストらは13日付リポートで、精密機器セクターに関し「今後は事務機設置台数の削減が多くの企業で進められる可能性が高い」とした。
しかも、欧州では新型コロナの春の流行後、新規感染者の数はいったん落ち着いていたが、再び世界の感染の中心地となりつつある。同社の欧州売上比率は約30%にのぼるだけに、欧州の経済活動の正常化が遅れるとの懸念は投資家の売りを促しかねない。
■オフィス事業の苦戦
コニカミノルは2021年3月期(今期)の業績を未定としている。市場予想の平均であるQUICKコンセンサスの連結営業利益は前期比56%減の36億円(10社、13日時点)だ。コロナ禍でテレワークが進み主力のオフィス事業の苦戦が続くとの見方が多い。
追い打ちをかけるのが政府が進める行革だ。官公庁のオフィスが一変する可能性が高く、オフィス事業の利益を圧迫しそうだ。
業績回復に必要なものは何か。三木証券の北沢淳商品部投資情報グループ次長は「各社とも時代に対応した新しい収益源を投資家に示すことだ」と話す。「ヘルスケアやIT(情報技術)支援に注力し始めており、成果が出れば巻き返せる」(北沢氏)という。デジタルトランスフォーメーション(DX)を支援するサービスなど打つ手はありそうだ。