【日経QUICKニュース(NQN)尾崎也弥】10月16日の新興企業向け株式市場で、マネーフォワード(3994)株が下落した。15日発表の2019年12月~20年8月期決算を受け、増収ペースが鈍化したと受け止められた。ただ、同社は「フィンテック」企業の先駆けだ。市場での成長期待は簡単には途絶えないとの見方もある。
![※マネーフォワードの株価推移](https://qmwstorage01.blob.core.windows.net/labomediacollection/sites/5/2020/10/9191aa1004a69261aa9ad551d214180e-300x167.png)
■「決算が利益確定売りのきっかけ」
マネフォは2017年9月にフィンテック関連企業として初めて東証マザーズに上場した。個人向け家計簿アプリと、会計ソフトなど企業向けのクラウドサービス事業を2本柱に、開発や販促にかかる先行費用を利用者から定期的に受け取る料金によって回収する事業モデルだ。赤字が続いてるので、売り上げの伸びが市場での評価ポイントになっていた。
15日に発表した2019年12月~20年8月期決算で売上高を四半期ごとに区切ってみてみると、直近四半期(6~8月期)は前年同期比の増収率が約50%と、直前四半期(3~5月期)の約70%から鈍化した。テレワーク需要を取り込んだ半面、主に金融機関向けサービスを手掛ける「マネーフォワードX」で大型案件が集中した前の四半期の反動が出た。
マネフォ株は16日、一時前日比7%安の8270円まで売られた。マネフォ株は東証マザーズ指数の最近の上昇気流に乗り、9日には上場来高値(9390円)を付けていただけに「決算が利益確定売りのきっかけになりやすかった」(岡三証券の小川佳紀・投資戦略部長)。
■「いずれ黒字化できる」
もっとも、株価は下げ渋った。16日の終値は3%安の8630円だ。「コロナ禍における『DX化』の加速でマネフォのビジネスチャンスは広がっていく」(岡三証券の小川氏)という期待は根強い。高速インターネットやクラウドサービス、人工知能(AI)などのIT(情報技術)によってビジネスや生活の質を高めていくDX(デジタルトランスフォーメーション)。今年に入りその市場は急速に拡大しているとみられる。
マネフォによると、DX化に向けた金融機関からの問い合わせが増えているという。マネフォのクラウドサービスは会計のみならず、勤怠管理や社会保険手続きなどにも広がっており「売り上げの積み上げでいずれ黒字化できるのではないか」(インターネット証券)という声が聞かれる。マネフォは11月末現在の1株を2株に分割する株式分割を決算と併せて発表しており、先を見越した個人の押し目買いも入りやすかったようだ。
新興市場では海外投資家の存在感が強まっている。「彼らが重視するのは流動性と時価総額の大きさで、時価総額が2000億円を超えるマネフォも十分、買いの対象になる」(国内証券の日本株担当者)という。
マザーズ指数は今週、約14年ぶりの高値を付けた。マザーズ指数、マネフォ株ともにきょうの下げは調整の範囲内との指摘もあるが、マネフォ株が売りへの耐性を強めるには、やはり早期の黒字化が必要だろう。