【QUICK Market Eyes 大野弘貴】10月14日、日銀が上場投資信託(ETF)の買入額を801億円から701億円(設備・人材ETF除く)に減額した。1回の買入額が700億円台に戻るのは2月以来となる。日銀が買入額を減額した正確な意図は不明だ。ただ、3月の急落以降、株式市場が反発して2月中旬以来の水準まで回復したことや、日経平均VIが20割れまで下落するなど、株式市場が平常時に戻ったと認識したことなどが考えられそうだ。
■買入額とTOPIX騰落率の関係
日銀は3~9月の7カ月間でETFを5兆903億円も買い入れた。この間の買入額だけで、現在の「原則的な」買入れ方針である「保有残高年間約6兆円に相当するペースで増加する買入れ」の6分の5を消化したことになる。なお、3月の金融政策決定会合以降、ETFの買入残高増加ペースは年間の上限が約12兆円まで拡大されている。
日銀が1回のETF買入れ額を700億円台に引き上げたのは2016年8月4日からだ。この時以降の1回の買入額別の後場TOPIX平均騰落率を示したのが下記の表になる。
ある意味当然と言えるかもしれないが、買入額が大きくなるほど後場のTOPIX騰落率は上昇する傾向がある。なお、1回の買入額1000億円台の後場TOPIX騰落率は平均0.21%高だが、4月1日を除外すれば0.31%高まで上昇する。同日は1回の買入額が3月までの2004億円から1202億円に減額となったことがネガティブサプライズとなり、後場だけで3.13%下落していた。
1回の買入額700億円台は、やはりこれまでの買入額程の株価押し上げインパクトに欠けることになる。一部から「3月の日銀が1回のETF買入額を増額して以降、前日の米株市場の下げが大きく日銀が後場にETFを買入れることが明らかであるような日は、一部の機関投資家では終日かけて売却するところを後場多めに売りを出すようなところもあった」(外資系証券トレーダー)との声が聞かれた。
■日銀の買入インパクトは…
今後は日銀のETF買入れを睨んで動いていたフローも、これまでと異なる動きが生じる可能性もありそうだ。ただ、前出の外資系証券トレーダーは、「それでも大きく下落した際は、年間上限約12兆円ペースである1000億円以上での買入れに変更される可能性も残る」と付け加えた。
大きく相場が下落した時は再び買入額が増額される可能性があることから下値不安は後退したままと言えるかもしれないが、日銀の買入インパクトは1000億~2000億円の買入額程、大きくはないとの認識も持ち合わせたほうがよさそうだ。
なお、日銀のETF買入条件は、前引け時点のTOPIX前日比騰落率が0.5%安以下、前日までに続落していた場合は0.25%安に緩和されるとの見方が多い。
<金融用語>
日経平均VIとは
日経平均ボラティリティー・インデックス(日経平均VI)は日本版の恐怖指数(VIX指数)ともいう。日本経済新聞社が2010年11月19日から算出・公表を開始した、投資家が予想する将来の株式相場の変動率をオプション価格を使って指数化したもの。大阪取引所に上場している日経平均オプションの価格を利用し、投資家が抱く1カ月先の日経平均株価の予測変動率(ボラティリティー)を表す。通常、この値が高いほど、将来の日経平均が大きく変動すると投資家が予想していることになり、相場の先行き見通しに不透明感が強いことを意味する。2012 年1月30日からをリアルタイム(15 秒間隔)での算出を開始した。