【QUICK Market Eyes 片平正二】株式市場ではソフトバンクG(SBG、9984)の動向に対する関心が依然として高い。中国の電子商取引(Eコマース)大手のアリババ・グループ傘下の金融会社アント・グループの新規株式公開(IPO)が承認されたと伝わった19日は日経平均株価を押し上げた。現物指数のNT倍率は14.48倍まで拡大し、8月6日以来、2カ月ぶりの高水準を回復した。20日の終値は前日比1.43%安となったが、直近のレンジである7000~7250円のレンジでもみ合う流れに大きな変化はなかった。来月に予定する決算が今後の株価動向のカギを握りそうだ。
ある外資系の19日付クレジット分析リポートでは、11月9日に決算発表を予定しているSBGに関して「3月以降、追加的な資産売却と合わせて総額最大7兆5000億円の資金化を発表し、9月末までに5兆7000億円の現金を入手したと思われる。他方、この獲得現金のうち既に実行済みのものを含めて自社株買いに2兆円、社債とローンの返済に1兆4000億円充当される見込みであるが、残額2兆3000億円の資金使途に注目が集まる」と指摘。
「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)を通じた特別買収目的会社(SPAC)設立等の観測報道もあり、SBGは資産価値の透明性を加速させている印象である」としながら、経営陣による非上場化(MBO)については「経営の自由度と資金調達の柔軟性のトレードオフをもたらすが、現時点では後者を重視し上場維持を優先すると弊社では考えている」という。SBGの株価は足元で上昇中であっても「大幅なディスカウントが続く限りこのリスクイベントを警戒する動きは続くであろう」とし、株価と孫正義社長のコメントに注目していた。短期的には株価が上がれば還元期待、下がればMBO観測で一進一退となるのだろうか?