【NQNニューヨーク 戸部実華】「動画配信の雄」の成長の勢いが鈍った。ネットフリックスが10月20日夕に発表した2020年7~9月期決算は市場予想を上回る増収だったが、有料契約者数の伸びは年前半から急減速した。新型コロナウイルスのまん延で自宅でサービスを利用する「巣ごもり消費」の恩恵が弱まった。
■「記録的な伸びの反動が出た」
「予想通り伸びは減速した」。ネットフリックスは決算資料で7~9月期の契約者数についてこう記述した。世界の有料契約者数は220万人増と、前年同期(677万人増)の3分の1にとどまり、会社予想(250万人増)も下回った。5四半期ぶりに市場予想も下回り、1~6月期に2600万人近く増えた「記録的な伸びの反動が出た」(決算資料)ようだ。

7~9月期は米国で経済活動の制限が和らいだうえ、野球などプロスポーツの生中継もあり、1~6月期と比べてネットフリックスの視聴時間が減る環境ではあった。1~9月期でみれば有料契約者数は2806万人増え、19年の年間(2783万人増)を上回ったことを考慮すれば、減速はやむを得ない面もある。それでも契約者数の伸びを会社の成長指標とみなしてきた市場では、失望売りから時間外取引で株価は一時7%安に沈んだ。
■海外市場の開拓に手応え
ただ、明るい材料もある。7~9月期の契約者数の伸びの半分近くを占めたアジア太平洋(101万人増)の成長だ。韓国と日本を中心に利用が拡大しているといい、インドなど他のアジア各国にも成長の余地があるとの見方を示した。北米は18万人増と4~6月期(294万人増)から急減したが、海外市場の開拓の手応えは感じているようだ。
10~12月期の世界の有料契約者数は600万人増を見込み、前年同期(876万人増)を下回る。それでも年間では3400万人増と、過去最高だった18年(2860万人増)を優に上回る。世界各地で独自コンテンツの制作を再開しつつあり、21年は四半期ごとに前年同期よりも多くの新作を投入する。コロナ禍でも着実にコンテンツの魅力を高めており、競争力が弱まるどころか「世界の動画配信業界で支配的な地位を保つ」(ピボタル・リサーチ)との見方は揺らいでいない。
■「価格支配力は強まっている」
海外の成長と並んで、今後の収益のカギを握るのが北米での値上げだ。ネットフリックスは最近、米国で1カ月間の無料体験キャンペーンを終了した。カナダでは10月に値上げに動き、米国では来年にも2年ぶりに料金を引き上げるとの見方がアナリストの間で広がっている。同社のグレゴリー・ピーターズ最高執行責任者(COO)は、20日夜の決算説明会で「それぞれの地域でより高い価値を提供しており、時には契約者に少し値上げさせて欲しいと頼むこともあるだろう」と検討していることをにおわせた。
ネットフリックスの価格支配力は強まっている。ネットフリックス利用者への調査によれば「値上げを受け入れる」との回答の比率が19年10~12月期より20年7~9月期の方が高かったという。値上げすれば株価の上昇余地は高くなる。
■改善ペースは加速する
会社側は10~12月期の売上高営業利益率を13.5%(前年同期は8.4%)と予想。通期では18%と従来予想(16%)より引き上げた。通期のフリーキャッシュフロー(純現金収支)予想は従来の「トントンから黒字」から20億ドルの黒字に上方修正した。収益改善に自信を深めており、米国での値上げが実現すれば改善ペースは一段と加速するはずだ。
契約者数増への期待が高かっただけに、今回の決算ではひとまず市場にショックが広がった。だが、海外で成長を維持しつつ、利益率という質の改善に市場の関心が向かえば、買いが戻ってくる可能性は高い。