中小企業の資金需要が依然、強い。日銀が10月21日に発表した10月の主要銀行貸出動向アンケート調査によれば、過去3カ月の資金需要の強さを示す判断指数(DI)は中小企業向けでプラス24だった。前回7月公表の調査(プラス54)に比べ低下はしたが、それでも水準はリーマン・ショック後に最も資金需要が強まった2009年1月公表の調査と肩を並べる。市場では日銀に対応を求める声が出ている。
■中小企業の資金需要は高止まり
DIは企業の資金需要が「増加した」と答えた金融機関の割合から「減少した」と答えた割合を引いて算出する。大企業や中堅企業向けも含めた企業向け全体のDIはプラス14と前回(プラス59)から45ポイント低下した。低下幅は2000年の調査開始以来最大だ。大企業を中心に手元資金を確保する動きは落ち着いているが、中小企業に限れば資金調達ニーズは高止まりしている。
市場では中小企業の資金繰りについて「売り上げの回復が遅れ返済が難しくなっている。追加の借り入れ需要も根強い」(SMBC日興証券の丸山義正氏)との見方がある。資金繰りの面で平時に戻りつつある大企業に比べ、財務で劣る中小企業は新型コロナウイルスの悪影響が色濃く残る。
■日銀の支援策延長の可能性
大企業を中心に「日銀の資金繰り支援策が功を奏している」(第一生命経済研究所の藤代宏一氏)のは事実だ。市場では、日銀が企業の資金繰りを支援する130兆円規模の特別措置の期限を現在の2021年3月末から延ばす可能性が取り沙汰されている。SMBC日興の丸山氏は「中小企業の資金需要の強さを考えれば延長が必要だ」と指摘。「10月か次回(12月)の金融政策決定会合で延長を決めれば金融市場の安定にも資する」と話す。
日銀の桜井真審議委員は21日、福井県で開かれた金融経済懇談会にオンラインで出席し、企業の支援策について「資金繰りを確保し、企業倒産および失業を防ぐための取り組みを粘り強く続ける必要がある」と述べた。日銀内では雇用の安定に対する問題意識が強い。無差別な企業支援には賛否あるものの、早めに支援策の延長が決まっても不思議ではない。〔日経QUICKニュース(NQN)川上純平〕
<金融用語>
金融政策決定会合とは
日本銀行の政策委員会が、金融調節の基本方針、基準割引率、基準貸付利率および預金準備率の変更など、金融政策の運営に関わる事項を審議・決定する場をいう。年8回開催し、会合終了後、直ちに決定内容を公表する。政策委員会は、日銀総裁、副総裁2名と審議委員6名の計9名の委員で構成される。 会合での主な意見をまとめたものを「主な意見」として、原則会合の6営業日後に公表し、政策委員の経済・物価見通しを「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」として年4回の会合で審議・決定のうえ公表する。