【日経QUICKニュース(NQN)藤田心】
国際商品市場で銅先物が上昇している。10月21日のロンドン金属取引所(LME)では3カ月先物の終値が1トン6991.5ドルと、連日で2年4カ月ぶりの高値を付けた。最大消費国の中国での需要回復や、電気自動車(EV)の市場拡大への期待が相場を押し上げている。心理的節目の7000ドルが迫るなか、市場では「米大統領選次第では7000ドルは通過点」との声も聞かれる。
![※LME銅3カ月先物の推移](https://qmwstorage01.blob.core.windows.net/labomediacollection/sites/5/2020/10/191b18ead22d8f5886649630d4a9afbf-300x167.png)
■最大消費国の中国での需要回復
21日の終値は2018年6月中旬以来の高値で、10月に入り3週間で5%上がった。米国の追加経済対策を巡る与野党の協議が進展するとの期待が広がり、投資家のリスク選好姿勢が強まっている。産業界で幅広く用いられ、景気の先行きを占ううえで参考になるため「ドクター・カッパー」の異名を持つ銅にも資金が流入している。
銅には独自の買い材料も目立つ。中国国家統計局が19日発表した9月の工業生産高は前年同月比6.9%増と、増加率は8月から拡大した。7~9月期の国内総生産(GDP)や9月の小売売上高なども伸びが加速し、最大消費国の需要回復が意識されやすい。
■EVに期待
EVに対する期待も銅相場を支える。EVは電気モーター内の巻き線や各種配線で銅を使うため、1台当たりの使用量はガソリン車よりも多い。欧州では欧州連合(EU)が21年から厳しい排ガス規制を本格導入するのに合わせて、EVシフトが進む。フジトミの斎藤和彦氏は「新型コロナウイルス禍による工場の稼働停止を好機と捉え、生産面でもEVシフトに拍車がかかるのではないか」とみる。
中国でもEV販売は好調だ。米EVメーカーのテスラが21日発表した20年7~9月期の純利益は前年同期比2.3倍の3億3100万ドル(約345億円)だった。調査会社によると期中の中国でのEV販売台数は前年同期比2.6倍に伸びたもようで、好調な中国販売が追い風だったようだ。
■コロナによる供給面での不安
銅には、新型コロナの影響で操業に影響が出るといった供給面での不安がある。また、この時期は南米の鉱山で労働条件を巡る労使交渉が多く、従業員側のストライキも警戒される。実際、21日には住友金属鉱山(5713)が権益を持つチリの銅鉱山の操業が止まったことが明らかになった。
もっとも、市場ではここから一本調子に銅相場の上昇が続くとの見方は少ない。世界で新型コロナの感染が再び拡大しており、11月の米大統領選挙も目前に迫っている。住友商事グローバルリサーチの本間隆行氏は「5000~6000ドル台で長く推移したため買い進みにくさがある」と指摘。その上で「米大統領選で環境政策に重点を置く民主党のバイデン候補が勝てばモノの流れが変わる可能性が高く、年末にかけて上値を追う展開はありうる」とみていた。
<金融用語>
LMEとは
London Metal Exchangeの略称で、和訳はロンドン金属取引所。世界最大規模の非鉄金属専門の先物取引所。銅・亜鉛・鉛・ニッケルなどを上場しており、ここでの取引価格が国際価格をリードする役割を担っている。