ビジネスSNS(交流サイト)を手掛けるウォンテッドリー(3991、マザーズ)が10月15日にオンラインで開いた2020年8月期連結決算の説明会では従業員の定着などを支援する「エンゲージメント」や「解約」、「プロダクト」などが焦点になっていたことがわかった。説明会の内容をテキストマイニングし、分析した。
20年8月期は売上高に相当する営業収益が前の期比6%増の30億円、営業利益が同45%増の4億4300万円と増収増益だった。もっとも、新型コロナウイルスの影響で20年6~8月期(第4四半期)は飲食業や観光業などの企業からサービス解約が続いており、営業収益は前年同期比で4%減となった。
兼平敏嗣執行役員は「新型コロナウイルスに端を発する不透明な環境を踏まえ、コスト削減を積極化した」と指摘。通期での大幅増益は新規投資の抑制など「コスト削減を第一に優先させた結果」と説明した。
コロナ禍で経営環境が厳しくなっている飲食業や観光業のうち比較的長い契約期間の企業の解約が一巡していない可能性なども踏まえ、先行きの不透明感は根強いという。21年8月期の営業利益は、前期比93%~44%減の大幅減となる3000万円から2億5000万円を見込んでいる。
ソフトウエアをクラウド経由で提供する「SaaS」型の継続課金のビジネスモデルを展開しており、21年8月期は将来収益の確保に重要な解約率の低下に注力する方針だ。鍵を握るのはエンゲージメント事業だ。21年8月期は投資を再開し、強化につなげる。兼平氏は「既存顧客を中心に長期的な利用を促進して解約率の低減につなげていく」と丁寧に説明した。
SNSやイベントの活用による企業の人材採用支援が事業の柱だったが、今後はエンゲージメント事業により人材の定着や活躍といった採用後に焦点をあてていく方針だ。福利厚生サービスの「Perk(パーク)」、社内報サービスの「Internal Story(インターナルストーリー)」、コンディションマネジメントの「Pulse(パルス)」の3つのプロダクトで強化を目指す。試作品はすでに100社以上が利用を開始していると付け加えた。
アナリストやマスコミの質問では先行きの収益見通しに改めて強い関心が集まった。「SaaSビジネスの特性上、回復局面でストック収入を積み上げ直す必要があるので、相対的に回復がスローダウンするのでは」との質問に対し、兼平氏はSaaSビジネスの特性上、落ち込みが相対的に少ないためそのような観点は考えられると認めつつも「サービスのメイン顧客が比較的影響が少なかったIT(情報技術)系に強いサービスであるというのが追い風」と指摘。「コロナ後の世界に達したときに、しっかり成長できるようきちんと投資する」と先行きの業績回復に自信を示した。(QUICK Market Eyes 阿部 哲太郎)