【NQNニューヨーク 岩本貴子】ニューヨーク商品取引所(COMEX)で、金相場が軟調に推移している。取引の中心である12月物は10月28日、前日比1.7%安の1トロイオンス1879.2ドルで取引を終えた。為替市場でドル高が進んだことに加え、金融市場の変動率の上昇を受けて、これまで金相場の上昇を支えてきた投資資金が流出し始めているようだ。
■金がリスク資産に
12月物は一時1869.1ドルと1カ月ぶりの安値をつけた。8月上旬につけた過去最高値に比べると10%程度下げたことになる。

2020年は新型コロナウイルスのまん延をきっかけとする世界の景気後退や各国中央銀行による低金利政策など、金相場の上昇を後押しする材料が相次いだ。だが、「今年に入りS&P500種株価指数との相関性が高くなっていることや、金先物の価格変動率の上昇を考えると、金は相対的に安全資産というより、リスク資産と位置づけられていた」(JPモルガン)との声がある。
そうなると、投資家のリスク許容度が低下すれば売りは出やすい。投資家心理を測る指標である米国株の変動性指数(VIX)は上昇基調にあり「資産価格の変動率に注目している投資家が、変動率上昇を理由に金の持ち高を減らして現金に変えている」(TD証券)という。
■「金も換金売りにさらされる」
実需の買いが入りにくいことも相場の逆風だ。金の国際調査機関ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、新型コロナのまん延による高額消費の手控えで20年上半期の中国の宝飾品需要は52%減だったという。インドの需要も新型コロナの感染を防ぐための都市閉鎖の影響で60%減となった。
米ドルの代替資産とみなされる金だが、中央銀行はそうした観点からの買いを控えているとの指摘もある。ロシアの中央銀行は4月以降、金の購入を停止していると伝わっており、WGCによると各国の中央銀行の金の売買量を差し引きすると8月は売りが上回ったという。
サクソバンクのオーレ・ハンセン氏は「短期的に米大統領選の結果次第で金先物への強気の見方が崩れる可能性を市場は無視しているようだ」と指摘する。リスクオフの動きはまず株安・ドル高という形で先行しているが、大統領選の結果が市場の想定と違った場合、「金も換金売りにさらされる」(サクソバンクのハンセン氏)と警戒する。
各中央銀行の金融緩和は続き、米国では大統領選の結果にかかわらず21年1月以降に大規模な財政支出が見込まれる。低金利と財政支出が物価上昇につながることも考えられ、金は長期的な強気の見方が崩れたわけではない。だが、反発に向かうまでには時間がかかりそうだ。