【日経QUICKニュース(NQN) 西野瑞希】ニューヨーク原油先物相場が日本時間2日の取引で急落し、5カ月ぶりの安値をつけた。欧米で新型コロナウイルスの感染が拡大し、原油需要が落ち込むとの警戒感が売りを促した。リビアの増産や、3日に投開票を控える米大統領選の決着に時間がかかるとの見方も原油相場の重荷となっている。
ニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)で日本時間2日、米指標油種であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエート)の期近12月物は一時1バレル33.64ドルまで売られた。前週末の清算値と比べ2.15ドル(6.0%)安と5月29日以来、およそ5カ月ぶりの安値をつけた。
■需給懸念
欧米で新型コロナの感染拡大が続くなか、英国のジョンソン首相は10月31日、首都ロンドンを含むイングランドで外出制限を含めた約1カ月間の限定的なロックダウン(都市封鎖)を実施すると発表した。フランスやスペインなどでも行動規制は強化されている。
米国でも新型コロナの新規感染者数は過去最多を更新し続けている。野村証券の大越龍文氏によると、米国では今春の感染拡大時に石油製品の消費量が4割落ち込んだ。そうした経緯があり、欧米の需要冷え込みへの懸念が強まっている。
供給面からも原油相場は押し下げられている。ハリケーン「ゼータ」は石油施設の集中する米メキシコ湾岸を通過し、ハリケーンに備えて操業を停止していた石油施設は再開しつつある。米安全環境執行局(BSEE)によれば、先週のピーク時に原油生産は日量157万バレル停止していたが、1日時点で停止量は約半数に減少した。米メキシコ湾岸からの供給が増えるとの見方が相場の重荷になった。
ロイター通信は1日、「リビアの生産量が日量80万バレルに達した」と伝えた。内戦の影響で生産を制限されていたリビアの増産などを受けて、石油輸出国機構(OPEC)の10月の原油生産量は4カ月連続で増加した。
OPECに非加盟国も含めた「OPECプラス」は来年1月に協調減産の縮小を予定していると伝わっている。ただ、市場では「原油価格が下落した局面では、サウジアラビアは減産規模の維持を主張するなど石油需給の引き締めに向けて何かしら発言するはずだ。しかし、今のところ発言はなく、主張できないほど内部の結束が乱れている可能性がある」(石油アナリスト)という。
■米大統領選も波乱要因
3日には米大統領選が実施される。トランプ米大統領はペンシルベニア州で消印が間に合っていれば郵便投票を受け付けることを「不正」として訴える構えをみせており、混乱が長期化する可能性がある。追加の米経済対策が一段と遅れるとの懸念があり、原油相場の重荷になりそうだ。
今後の見通しについて、日産証券の菊川弘之氏は「弱い材料は多いものの、このまま下落し30バレルが近づけばOPECプラスは減産幅を拡大すると予想される。年末以降は灯油の需要期に入ることもあり、安値圏では買い戻しが入りやすい」と話した。下落が止まるかを見極める上で、新型コロナの状況に加え、OPECプラスの動向からも目が離せない。