11月4日の米株市場では主要な株価指数が大幅高となっている。ハイテク株比率が高いナスダック総合株価指数の上昇率は一時4%を超えた。米大統領選と上下両院選のすべてで民主党が勝利する「ブルーウエーブ」の可能性が低下し、政策リスクの後退でハイテクやヘルスケア株に買いが集まった。
■共和党が多数になれば…
スマートフォンのアップルは4.6%高、インターネット通販のアマゾン・ドット・コムが6.2%高、SNS(交流サイト)のフェイスブックも8.1%高まで上昇する場面があった。民主党政権の誕生ならハイテク企業への規制の必要性を訴えるウォーレン上院議員が閣僚入りし、巨大ハイテク企業の分割論が俎上(そじょう)にのぼるとの見方もあった。こうした懸念が低下したことも大型ハイテク株への買いにつながった。
長期金利の低下も追い風だ。上院で共和党が多数になれば、民主党のバイデン前副大統領が公約に掲げていた大型の経済対策の成立が困難になるとの見方が広がった。4日の米長期金利は前日に比べ0.1%以上の大幅な低下だ。長期金利の低下は、高PER(株価収益率)銘柄が多いハイテク株の割高感を和らげる。
政策リスクの後退が買いを促したもう1つの業種がヘルスケアだ。医療保険大手ユナイテッドヘルス・グループの上昇率が一時10%を超え、製薬のイーライ・リリーは一時16%上昇した。共和党が上院で多数派を維持すれば、バイデン氏が掲げる薬価引き下げにつながる医療制度改革が進まないとの見方が買いを誘った。
一方、PERが低くバリュー(割安)株に分類される銀行や資本財株は下落している。ブルーウエーブによる大型財政出動の期待が薄れたためだ。景気敏感株が多いバリュー株から資金が流出し、ハイテクなどグロース(成長)株に資金が移った。ハイテク株やヘルスケア株に比べ景気敏感株は時価総額も小さく、相場への影響は限られている。
投資家心理を測る指標で、別名「恐怖指数」と呼ばれる米株の変動性指数(VIX)は4日に20%を超える下落率となり、30を割り込んだ。選挙を通過し、不安心理が後退したようにみえる市場。もっとも、選挙の勝敗はまだ判明しておらず、激戦州の結果を巡って混乱が続くリスクは残る。市場では「きょう1日の市場の反応だけで大統領選の結果を織り込んだとみるのは危険」(米国株トレーダー)との声も聞かれた。(NQNニューヨーク 張間正義)