コンピューターを使った高頻度取引(HFT)大手の米バーチュ・ファイナンシャルが11月6日発表した2020年7~9月期決算は、最終損益が1億1670万ドルの黒字(前年同期は4312万ドルの赤字)だった。相場変動率が高止まりするなか、売上高の指標となる純トレーディング収益は引き続き伸びたものの、大荒れ相場だった年前半に比べると伸長率の鈍化は鮮明だ。
売上高の指標となる、手数料などを支払った後の「調整後純トレーディング収益」は45%増の3億6225万ドルとQUICK・ファクトセットがまとめた市場予想(3億5100万ドル)を上回った。売り買い両方の注文を出すマーケットメーク(値付け)にかかわるトレーディング収益が大きく伸びた。新型コロナウイルスのまん延で幅広い資産の相場変動率が上昇し、取引量も増えた。調整後の1株利益は0.81ドルと市場予想(0.72ドル)を上回った。
HFTは市場に流動性を供給するマーケットメークが主業務で、自ら提示する売値と買値の差(スプレッド)で利益を上げる。新型コロナの感染拡大で世界的に株式市場の変動率が高まった1~3月はスプレッドも広がり、利益が大きくなった。ただその後、相場変動率は低下基調となり、7~9月期の調整後純トレーディング収益の伸び率は1~3月期(3.4倍)や4~6月期(2.8倍)に比べると大きく鈍った。
それでも6日の米株式市場でバーチュ株は上昇。前日比6.1%高の23.27ドルまで上げる場面があった。
(NQNニューヨーク 岩本貴子)
<金融用語>
高頻度取引とは
高頻度取引とは、高速取引、ハイフリークエンシー・トレード(High Frequency Trading、HFT)とも呼ばれ、コンピューターが株価や出来高などの動きをミリ秒(1000分の1秒)単位以下の速度で判断し、超高速の自動発注を繰り返して大量売買する取引。ポジションの保有期間が極めて短く、取引頻度を高めることで資本回転率を上げ、高い収益をねらう。 株式や先物の市場の売買で大きな割合を占めており、相場を瞬時に変動させることもあることから、批判的な見方もある。