【QUICK Market Eyes 弓ちあき】QUICKの11月の月次調査<株式>では高値警戒感の高まりを意識させる結果となった。日経平均株価は11月6日に1991年以来、29年ぶりの高値水準を早々と回復したものの、11月調査(調査期間は2日~5日まで)では日経平均株価の11月末の予測は2万3500円(中央値)、最頻値も2万4000円となっており、急ピッチの上昇に対し、その持続性には懐疑的な見方が根強いようだ。
注目の米大統領選を巡っては民主党のバイデン元副大統領が勝利宣言を行ったものの、投票の再集計が行われるほか、トランプ大統領は訴訟を検討するなど最終決着まではまだ時間がかかりそうだ。大統領選の経済対策期待は市場を支えているが、「上院は共和党が占めるため政治の混乱が生じる可能性がある」(投信投資顧問)との声もあり、期待から現実を見極める段階に移っていく公算が大きい。
なお、当面の投資スタンスでは「現状維持」が64%と、前月から13ポイント低下。一方、「やや引き上げる」が19%と3ポイント上昇し、「やや引き下げる」が11%、「かなり引き下げる」が6%とともに前月から上昇した。ポジション調整の動きが個別は出そうだが、買い遅れた投資家も多いと見られ全体では調整も限られそうだ。
なお、決算発表を通じて再びハイテク株への物色の強まりを感じさせる展開となっている。セクター別投資スタンスでは、「電機・精密」が「オーバーウエート」と「アンダーウエート」の差し引きでプラス33%と、トップ。次いで「自動車」がプラス15%だった。
電子部品やFA(工場自動化)機器には中国経済の回復が寄与しているほか、自動車生産の回復に伴い恩恵の裾野に広がりが出てきた点は日本企業の収益を底上げする公算が大きい。
また11月調査では金融庁の「コーポレートガバナンス・コード(企業統治指針)」や「スチュワードシップ・コード(機関投資家指針)」のフォローアップ会議の再開に伴い、ガバナンスの課題についても設問を設けた。回答では課題として示された5つのポイントのうち「資本コストを強気意識した経営」を挙げる声が38%と最も多く、次いで「中長期的な持続可能性」(32%)、「取締役会の質の向上・多様化」が15%、「親子上場の問題を含めた規律あるグループガバナンス」(11%)、「監査の信頼性の確保」(4%)となった。
この中で解消の動きが活発化している親子上場について、投資アイデアとして改めて検証してみたい。QUICKの特設サイト「親子上場ガバナンスウオッチ」で親会社への利益貢献度が高い子会社の上位10社を指数化して親会社と比較すると、新型コロナウイルス感染症の影響が拡大した3月以降で18.2ポイントの差が出た。
上位30社で見ても、同期間(2月28日~11月6日)の株価騰落率が「子会社>親会社」となっている企業は21社で過半を占める。
ガバナンス強化の流れの中で、足元は親子上場解消への思惑も高まりやすくなっている。一方、子会社の事業展開を迅速化するために上場維持が必要なケースもあるため、一概に解消の動きが必ずしもグループ戦略上プラスになるとは限らない。ただ、新型コロナウイルスなどで収益環境の不透明感が強い環境下では、事業範囲の小さな子会社の方が業績動向を把握しやすい点などが株価優位につながっている可能性もある。