【日経QUICKニュース(NQN) 矢内純一】13日の東京株式市場で、ソニー(6758)株が1週間ぶりに年初来高値を更新した。新型コロナウイルスのワクチン開発期待から、それまで投資資金が集まっていたグロース(成長)株に利益確定売りが広がったが、ソニーの下げは短期に終わった。12日発売の家庭用ゲーム機「プレイステーション(PS)5」がすでに入手困難となっており、業績にプラスとの期待が盛り上がる。
■逆風下の高値
13日のソニー株は一時前日に比べ385円(4.2%)高の9545円と、2001年5月以来19年6カ月ぶりの高値を付けた。12日の米株式市場でハイテク株の多いナスダック総合指数が下落し、13日の東京市場では東証株価指数(TOPIX)グロース株指数が下げた。相場全体の地合いは良くないが、そんな逆風をものともせず、ソニー株は買いが優勢だった。
逆行高の背景について、岩井コスモ証券の西川裕康シニアアナリストは「『鬼滅の刃』とPS5に尽きる」と語る。映画が大ヒット中のアニメ「鬼滅の刃」はソニーグループのアニプレックス(東京・千代田)が制作。主題歌やDVDなどを含めた関連ビジネスが収益を押し上げることが期待されている。
12日に国内で発売したPS5は予約が予定数に達し、受け付けを終了した。ヤフーの個人間取引サイト「ヤフーオークション」は12日、PS5について「高額な価格設定での出品や、入札による価格の高騰が複数確認できている」とのメッセージを出し、利用者に「冷静な行動」を要請。商品が手元にないと判断した場合は、出品削除などの措置をとるという。背景には、高額での転売を狙った「転売ヤー」の存在があるようだ。
今春にコロナ禍で株式相場が下落するなか、マスクが品薄になってシキボウ(3109)や川本産業(3604)など関連株が急騰したのは記憶に新しい。消費者の需要に供給が追いつかない状態は、商品の価格を上げるだけでなく、株価も上げる。
発売から3年以上たったいまでも抽選販売が珍しくない任天堂(7974)のゲーム機「ニンテンドースイッチ」は、やはり品薄のためにしばしばオークションサイトの中古品の価格が新品の希望価格を上回る。ソニー株に触発されたのか、任天堂株は12日に4%高になり、13日も上昇している。
■業績の裏付け
ソニーは10月下旬にゲーム事業などが好調なことから、2021年3月期通期の純利益見通しを上方修正した。市場では「年明けに4~12月期決算を発表するタイミングで再び上方修正するのではないか」(国内証券のアナリスト)との声も出始めている。
※ソニーの業績推移
アナリスト予想のQUICKコンセンサスを元にすると、ソニーの今期予想PER(株価収益率)は13倍台。仮に1万円台まで株価が上昇しても15倍前後。ライバルの任天堂の17倍台と比べると、ソニーの株価水準はなお「割安」にみえる。