【QUICK Market Eyes 川口究】日経平均株価が29年ぶり高値圏にありながら、ESGやサスティナブルといった潮流が止まる気配はない。関連投資の残高は高水準にあり、投資マネーを引き寄せるために企業側も一段と企業財務に関連要素を取り込もうと必死だ。
■JIFサステナブル投資残高調査、投資残高は6.6%減、株価下落が影響=大和
日本サステナブル投資ファーラム(JIF)は11月25日、第6回サステナブル投資残高アンケート調査結果が発表した。大和証券は26日付リポートで、「同調査より日本のサステナブル投資残高は前回調査比6.6%減の310兆円となったことが明らかとなった」と指摘。減少要因としてJIFは、同調査が原則3月末時点の残高を調査しており、前年比での株価下落を残高の減少要因と指摘したという。20年調査の残高上位は、投資手法別では①ESGインテグレーション、②エンゲージメント、③議決権行使、資産クラス別では①債券、②日本株、③外国株となった。
今回調査では日本株・外国株の合計値を超えて、債券が残高トップとなった。しかし、日本株残高が前年比2割強の減、外国株が同4割弱の減となった点は、株価動向を鑑みても違和感があるという。この点関しては、本年調査より回答を取りやめた機関が存在することや、JSIF公表資料にある通り「資産クラスには未回答の機関もある」といった点が影響として大きいとみている。 また、不動産の残高モメンタムが拡大しているが、新規回答機関の多くが不動産を運用の中心とすると見られる機関であったことが大きな要みている。
■インパクト会計や会計にESG要素を取り込む動きは今後も進展する可能性=SMBC日興
SMBC日興証券は26日付リポートで、ESG(環境・社会・企業統治)に関する情報開示の在り方が模索されるなか、サステナビリティに関する情報を会計に取り込む動きがみられるようになったと指摘。最近、ESGレポートの中でも取り上げられるようにインパクト会計について、概要を解説した。同会計手法は、環境に対する影響だけでなく、人々の健康への影響や従業員の多様性まで、様々な社会的インパクトを一定のロジックを踏まえ、透明性をもって金額測定し、従来の財務会計に取り込む会計であるという。
具体的に、従業員に関する社会的インパクトは、従業員に対する給付額をベースに賃金格差や出世の機会、精神面も含めた治療費や多様性等を定量化している。一方、消費者向けパッケージ食品では、二酸化炭素(CO2)排出量だけでなく、カロリー、食物繊維やトランス脂肪酸等、食品に含まれる栄養素の影響を定量化しているという。
こうした手法は、実務として定着するには定量化の項目の選定方針や網羅性、比較可能性、適時開示の実行可能性及び監査可能性といった課題も多く、現時点では企業の裁量の余地は大きく、参考情報との位置付けとされる。
その一方で、定量化のロジックには相応の説得力があり、既に武田薬品工業(4502)やスイス製薬のノバルティスのようにインパクト会計の考え方を取り入れて開示している企業も登場し始め、またエーザイ(4523)では財務会計の利益にESGの要素を取り込んだESG-EBITを公表しており、こうした動きは今後も進展すると見込む。
<金融用語>
サステナビリティーとは
サステナビリティーとは、英語表記はsustainability(=持続可能性)。 主に、社会が将来にわたって持続的に成長・発展していくために、環境負荷の削減とともに、企業活動の経済的側面や社会的側面など調和の取れた活動が不可欠であるという考え方をさす。 また、2003年3月に金融庁は、中小・地域金融機関に対して、「リレーションシップバンキングの機能強化に関するアクションプログラム」を公表し、中小・地域金融機関の不良債権問題の解決に向けた中小企業金融の再生と持続可能性(サステナビリティー)の確保を発表した。