【QUICK Market Eyes 阿部哲太郎】11月の月間の騰落率は、日経平均株価が約15%、TOPIXが約12%となる一方、東証マザーズ指数が約5%、日経ジャスダック平均が約3%と新興株の出遅れが鮮明になっている。
■新興株が強含むというアノマリー
ただし、年末から1月にかけては、個人投資家の損出し売りの一巡や主力企業が決算の端境期となることから新興株が強含むというアノマリー(経験則)がある。
新興株が年末年始に上昇しやすいとのアノマリーを確認するため、日経平均株価と東証マザーズ指数の過去の月毎の騰落率の平均を調べた。対象期間は東証マザーズ指数が算出を開始した2003年9月の翌月から2020年11月までを対象とした。
東証マザーズ指数の平均月間騰落率が最も高かったのは、4月で5.4%の上昇だった。次点が1月と11月で2.9%の上昇だった。ただ、1月の日経平均は平均で1.2%の下落となっており、アノマリーの通り1月は新興株の方が選好されやすいとの傾向が見られた。
ちなみに11月、12月は日経平均株価、東証マザーズ指数ともに平均で2%以上の上昇となっており、年末高のアノマリーの傾向も見て取れた。
※東証マザーズ指数と日経平均株価
■IPOの値動きに個人投資家が注目
年末年始の新興株の動向には、12月に26社予定されている新規公開株(IPO)の値動きも注目となりそうだ。通常はIPOの増加は、他の新興株の換金売りとなる場面もあり需給悪化との指摘もある。今年は株高で個人投資家の投資余力や意欲が高まっていることから新規資金の呼び込みも期待される。11月27日の日本経済新聞電子版によると2020年のIPO銘柄の公開価格に対する初値上昇率はここまで平均46%と過去20年でもっとも高い。
過去1年の公開価格に対する初値倍率のランキングでは1位がAI(人工知能)ソリューションのヘッドウォータース(4011)で11.9倍、2位が画像認識ソフトウエアのフィーチャ(4052、マザーズ)で9.06倍、3位が投資用不動産のタスキ(2987、マザーズ)で7.55倍と大きく上昇している。
対して過去1年の公開価格に対する下落ランキングでは、上位がリフォーム工事のニッソウ(1444、セントレックス)で▲26%、2位が金属リサイクルのリバーホールディングス(5690、2部)の▲26%などと上昇ランキングに比べると下落率は低い結果となっている。
東証マザーズの時価総額上位のうち、ECサイト構築支援や決済のBASE(4477)や弁護士マーケティング支援や電子契約の弁護士ドットコム(6027)、 医療向け人材採用・診療支援のメドレー(4480)はコロナ禍のニューノーマル銘柄として今年前半に大きく上昇した。値幅調整もあり、これらは未だに25日線を1割程度下回っている。IPOラッシュで個人投資家の物色意欲が高まり、これらのマザーズ銘柄が買われる展開となれば、アノマリーは今年も健在となりそうだ。
<金融用語>
アノマリーとは
アノマリーとは、効率的市場仮説では説明のつかない証券価格の変則性。明確な理論や根拠があるわけではないが当たっているかもしれないとされる相場の経験則や事象である場合が多い。英語表記はAnomaly。 たとえば、「1月効果」、「5月に売り逃げろ」(Sell in May and go away)、「曜日効果」、「モメンタム効果」、「リターン・リバーサル」、「低PER効果」、「小型株効果」などがある。