【日経QUICKニュース(NQN) 大貫瞬治】企業の倒産が減少傾向にあるなか、休廃業と解散の増加が目立っている。政府や日銀の施策を受けた実質無利子・無担保融資により、金融機関は新型コロナウイルスの影響で痛手を負った企業の資金繰りを支えようとしている。だが経営改善や債務返済のめどが立たず、店をたたむ事業者は多い。コロナ禍の影響が色濃いサービス関連では財務基盤が脆弱な企業も多く、来年にも倒産件数が再び増加する可能性がある。
■11月の倒産件数は最少
帝国データバンクが12月8日発表した11月の全国企業倒産集計で、倒産件数(負債1000万円以上の法的整理)は前年同月比22.2%減の563件と、11月としては比較可能な2000年以降で最少だった。春先から新型コロナ感染症による売り上げ減などの影響が徐々に顕在化し、倒産件数は7月に847件と2015年3月(847件)以来約5年ぶりの高水準となった。だが8月以降は金融機関の資金繰り支援などが奏功し、倒産件数は抑えられている。
■休廃業・解散の増加
気になるのは休廃業・解散の増加だ。休廃業・解散は、債務返済に行き詰まり法的整理を余儀なくされるといった「倒産」以外の理由で事業活動を停止した状態を指す。東京商工リサーチの調査では1~10月に休廃業・解散をした企業は4万3802件と、19年の年間件数(4万3348件)をすでに超えた。
SMBC日興証券の宮前耕也シニアエコノミストは「経営改善が見込めないことから資金繰りの見通しも立たず、店を閉める事業者がいる」と指摘する。景気の先行きが見通せないなかで事業継続を諦める経営者が増え、皮肉にも倒産件数の減少につながっている面があるとみる。
■「来年にも倒産が増えてくる可能性が高い」
政府と日銀は新型コロナ対策の一環として、足並みをそろえて企業の資金繰り支援を当面続ける方針だ。政府は1日の成長戦略会議でとりまとめた実行計画で、民間金融機関による実質無利子・無担保融資の申込期限を20年度末まで延長する方向で検討すると明記した。日銀の雨宮正佳副総裁は2日の記者会見で、企業の資金繰りを支える総枠140兆円超の日銀の特別プログラムについて「必要と判断すれば(21年3月末としている)期限を延長する」と明言した。
だが、実際に資金をやりとりする現場からは「コロナ禍を融資でしのいだとしても、その後は負債がのしかかってくる」(大手銀行の法人融資担当者)との声が聞かれる。新型コロナの影響を受けた中小企業や個人事業主は、飲食店など財務基盤が脆弱で自転車操業のところも多い。新たな収益源を見いだすことができなければ「来年にも倒産が増えてくる可能性が高い」と、倒産の「第2波」を予測する声も出ている。