2021年はドルが意外にも高くなる――。QUICKと日経ヴェリタスの共同調査で、外国為替市場の関係者に21年末時点での主要3通貨の強弱感を予想してもらったところ、「ドル>円>ユーロ」との回答が28%で最も多かった。欧米金融機関などではドル安を見込む声が多いが、「強いドル」予想の背景には、新型コロナウイルス禍からの世界経済の回復期待がある。
今年は外為市場も、新型コロナに振り回された。3月の「コロナショック」で、円の対ドル相場は一時1ドル=102円台を割り込んだが、すぐに1ドル=111円台まで円安に戻すなど乱高下した。年後半にかけては米連邦準備理事会(FRB)の金融緩和によるドルの余剰感からドル安基調が強まり、11月には1ドル=103円台前半まで円高が進行した。
足元でもこの流れは続いており、市場では21年もドル安傾向になるとの論調が目立つ。
ところが、今回の調査で来年最も強くなる(上昇する)通貨を聞いたところ「米ドル」(28%)が最も多く、「日本円」(17%)を上回った。特に、事業会社の担当者からドル高を見込む回答が多く寄せられた。
理由の1つは「アフターコロナ」への期待だ。来年最も注目するテーマを聞いた質問では、「新型コロナ」を半数の回答者が挙げた。英国では今月から、新型コロナのワクチン接種が開始された。回答者の声からは、来年央には日本も含めた多くの国でワクチンが普及するのではないかとの期待感がにじんだ。
大和証券の今泉光雄チーフ為替ストラテジストは「経済が正常に近づけば、海外投資の再開など需給面から円安・ドル高が進みやすくなる」とみる。危機に備えて手元資金を厚くしていた企業が海外に資金を振り向ければ、ドル需要は強くなる。
21年の円相場の高値・安値と、その時期を聞いた質問では「1~3月は円高」「年後半に円安」との回答が多かった。平均すると、高値は1ドル=99円97銭、安値が同108円22銭だ。
来年前半はコロナの悪影響が尾を引き、年度末の日本企業による円需要など円高要因が多い。半面、「経済の正常化で長期金利がじわりと上昇すれば、年後半に1ドル=106円程度まで円安の余地がある」(ソニーフィナンシャルホールディングスの尾河真樹執行役員)などと円安を見込む声が多かった。
調査は7~9日に実施。金融機関や事業会社の外為担当者など84人が回答した。
※QUICKでは株式、債券、外為の市場関係者を対象に、景気や相場動向についての月次アンケートを実施しています。それぞれの調査結果の詳細は、QUICKの様々な金融情報端末・サービスで公表しています。