個人投資家がなかなか手を出せない投資先として、非上場株式(未公開株式)がある。転売機会の乏しさやリスクの高さなどから個人への勧誘が制限されてきたが、規制緩和でサラリーマンでも少額投資可能な仕組みが整ってきた。インターネット上で個人から事業資金を集めるクラウドファンディングの一種「株式投資型クラウドファンディング」だ。
株式投資型クラウドファンディングのプラットフォームを運営するユニコーンは、昨年、インターネットサイト運営のZUU(4387)と資本業務提携し、今年10月にはベンチャー企業へ投資した個人投資家に対して税制上の優遇措置を行う「エンジェル税制」の認定事業者に認定された。今後、個人投資家の注目が見込まれる株式投資型クラウドファンディングとユニコーン社の現状について、同社の安田次郎社長に聞いた。
■個人にとっての新しい投資機会を提供
――株式投資型クラウドファンディングとユニコーンについて教えてください。
「株式投資型クラウドファンディングは、一般のサラリーマンでも非上場株に少額投資ができる仕組みです。従来は、(勧誘規制があるため)非上場株式に投資できるのは実質的にプロか、富裕層のエンジェル投資家に限られていましたが、制度変更を経て、少額(1人1社あたり年間50万円まで)であれば、登録を受けた少額電子募集取扱業者が扱えるようになりました」
「ユニコーンは2015年12月に設立されました。2016年から、(非上場株の募集についてネットを通じて多数から少額ずつ資金を集めることができる)第一種少額電子募集取扱業者として登録を受けるための準備を開始し、2018年12月に登録が完了、2019年2月に日本証券業協会に加入し、本格的に業務をスタートしました」
――株式投資型クラウドファンディングのメリットとデメリットを教えてください
「非上場株は、個人投資家にとっては新しい投資機会となります。生まれたばかりのスタートアップに投資できるかもしれません。場合によっては、上場株式よりも大きなリターンを狙える可能性もあります。参考までに、非上場株投資を手掛けるベンチャーキャピタルの場合、投資先のステージにも依りますが、一般的な期待リターンは10倍以上と言われています」
「一方、相応のリスクもあります。株式投資型クラウドファンディングはあくまで発行市場の仕組みであり、上場株のように整備された流通市場がありませんので、いつでも転売できるわけではありません。転売の機会は現状、上場やM&A(合併・買収)にほぼ限られています。このあたりは、株主コミュニティ制度と連携できると良いように思います。また、上場株における証券保管振替機構(ほふり)のような機関は存在せず、株主名簿は発行会社が管理しています」
■上場等のEXITを狙う企業を選別
――掲載している企業は何らかの選別をしていますか。
「しっかり選別しています。まず日本証券業協会の審査項目に基づいて、発行企業を審査しています。次に、その企業が中長期で上場、あるいはバイアウトによる売却を目指しているか、つまりイグジット(EXIT)する気があるかを見ます。非上場株は活発な流通市場がないため、企業が、ちゃんと投資家の利益確定の場を目指しているかが重要なポイントになります。ユニコーンでは3~5年の間にIPOを目指すといったイグジットについて明確な目標を掲げている発行企業を案件として紹介しています」
「加えて、投資家が『この会社を応援したい』『面白そうだ』と思えるポイントをアピールできるかどうかでも選別しています。どんなに素晴らしい事業でも投資家が理解できないとお金が集まらないためです。また、当社は原則として事業を開始して12か月経過している企業を審査の対象としています。例外としてビジネスコンテストでファイナリストになっている、ベンチャーキャピタルが出資しているなど第三者の評価があれば審査の対象となります」
――競合先との差別化要素について教えてください。
「株式投資型クラウドファンディングの運営会社として登録を受けている会社が6社ありますが、最近は大手の参入も増え、マーケットが活発化していることは良いことだと思います。その中でユニコーンの特長は、豊富な経験と知見で、企業の成長を幅広くサポートする点にあります。当社のメンバーはベテランが多く、社歴が長い企業や、経営陣がシニア層のベンチャーから見ても安心感を抱いてもらっています」
■日本のリスクマネーの流れに一石を
――確かに安田社長も、ベンチャー経営者としてはベテランです。
「私自身は1990年に証券会社に入社し、それ以降、内外の証券会社で企業の資金調達、資本政策に関する仕事をしてきました。2012年に一度、金融業界を離れ、まったく違うことをしていましたが、2016年に証券時代の後輩が創業したユニコーンに参画しました。本当は金融業界に戻るつもりはなかったのですが、話を聞いてみたら、これは日本の資金調達手段として一石を投じる存在、もしくは大きな流れになる可能性があると思い、手伝うことにしました」
「日本の課題は、リスクマネーの供給力が弱いことです。日経平均が89年末に史上最高値を更新してから下落を続け、当時、世界の時価総額ランキング50位内に日本企業が30数社あったのが、今は1社だけです。(産業の新陳代謝に必要な)スタートアップは増えてきていますが、米国と比べれば規模や量で差があります。どんなに良いアイデアがあっても、資金がないと成長できません。個人の金融資産が少しでもリスク資産、特にスタートアップ企業に回ることで、日本経済の活性化に携わっていければと思います」
(QUICK Money World)