一般社団法人ファイナンシャル・アドバイザー(FA)協会は16日、第1回の「FAカンファレンス」をオンラインで開いた。金融庁企画市場局の油布志行審議官が基調講演し、「資産が資産を生み、家計の金融資産が増える好循環に向け積極的なアドバイスやサポートをお願いしたい」とFAの活躍に期待をにじませた。
■「顧客のためになる活動を」、油布氏が呼びかけ
油布氏は米国と日本の家計金融資産を比較したグラフを使いながら、資産構成や増え方の違いなどを解説。「日本はあまりに元本確保型の安全資産に偏りすぎており、運用の果実を受け取れていない」と指摘した。これまで投資での成功体験が少ないことが一因であるとし、「家計の金融リテラシー向上と合わせ、マクロ環境が悪いなかでも資産を増やせるような顧客のためになる活動を販売サイドも考えてもらいたい」と呼びかけた。
金融庁の公表資料によると、2019年12月末の日本の家計金融資産が約1900兆円だったのに対し、米国は1京円を超える。その差が生まれた背景の一つが家計に占めるリスク性資産の割合で、米国の49.3%に対し、日本は18.7%にとどまった。米国では確定拠出年金(401k)の制度がリスク性資産の割合増加を後押ししたこともあって、金融庁もNISA(少額投資非課税制度)などの税制優遇の維持と拡充に力を入れていくとした。
■協会理事、ビジネス戦略をディスカッション
カンファレンス最後のパネルディスカッションにはFA協会理事の4人が登壇し、「コロナ禍におけるアドバイス・ビジネス戦略(お客様本位であるためには)」をテーマに話をした。GAIA(東京・新宿)の中桐啓貴社長はコロナショック時の対応を振り返り、「FAがつくことで相場変動を乗り越えられると(顧客に)実感してもらえた」と紹介。今後については「資産運用や保険、相続、住宅ローンなど(の問題解決)を1人のアドバイザーが最適化してくれる提案を追求していくべきだ」と語った。
SBIマネープラザ(同・港)の太田智彦社長が「すでに様々なライセンスを取得しているので、高度で専門的な金融サービスをワンストップで提供できる」としたほか、ファイナンシャルスタンダード(同・千代田)の福田猛社長は「顧客本位の業務運営を定着させるにはフィーベースのビジネスモデルが重要。証券や銀行も含めて業界全体で進めていく必要がある」と述べた。Fan(富山市)の尾口紘一社長は「これから資産形成や資産管理の重要性が高まり、対面サービスの付加価値が問われる。顧客のライフステージに合ったアドバイスは強みになる」と語った。
(QUICK資産運用研究所=西本ゆき、竹川睦)