【日経QUICKニュース(NQN) 山田周吾】2020年に国内企業が発行する社債総額は15兆円超と、過去最高になる見通しだ。新型コロナウイルスの感染拡大の影響を抑えるための日銀の購入拡大で発行しやすくなった企業が、なるべく低金利のうちに資金を確保しようと調達を急いだためだ。コロナ禍の影響が長期化するとの不安も後押ししている。日銀は18日の金融政策決定会合で大規模な社債買い入れ方針の延長と、購入枠の柔軟な配分を決めた。21年も高水準の発行が続くとの見方は多い。
1~12月に発行(予定を含む)の社債総額は約15兆3000億円と、これまでで過去最高だった19年(14兆5100億円、アイ・エヌ情報センター調べ)を上回る。
■3年債発行、昨年の3倍に
20年は社債を高値で買い入れる日銀が存在感を発揮した。日銀は企業の資金繰りを支援するため4月下旬、1社当たりの買い入れ額の上限を従来の約3倍に引き上げ、購入対象も残存期間「3年以下」から「5年以下」に拡大した。コマーシャルペーパー(CP)を含む購入額の上限は20兆円に上る。
企業の間では、コロナ禍の長期化を見据えて手元資金を厚くする意向が強い。日銀の買い入れ拡充で社債の上乗せ金利(スプレッド)が縮小すると、コストを抑えつつ資金を調達できる手段として発行が増えた。日銀に社債を持ち込み、さやを抜く目的から投資家による中期債の購入意欲も高まった。日銀の買い入れ対象である3年債の発行総額は約3兆円と、昨年のおよそ3倍になった。
普通社債より返済順位が低いが、高めの利回りを得られる劣後債の発行も活況だった。20年の発行額は昨年に続いて3兆円規模となった。「償還される債券の再投資先を考えた時、国債や普通社債は以前のような利回りが見込めず、より高い利回りを得られる劣後債が注目された」(大和証券の大橋俊安氏)。劣後債は発行額の一定規模を資本に組み入れることができ、コロナ禍で毀損した資本の積み増しを図る企業の間で活用が進んだ面も大きい。
持続可能な開発目標(SDGs)を経営の重要課題と位置付け、関連する事業に資金を充てる「SDGs債」の発行額も急増した。ヒューリック(3003)は10月、環境関連の目標を達成できなかった場合に支払う利息が増える「サステナビリティ・リンク・ボンド」(環境目標連動債)を発行。12月18日には芙蓉総合リース(8424)も同形態の社債を起債するなど、裾野が広がっている。
20年は12月11日起債のNTT(9432)傘下のNTTファイナンスが4本立てで計1兆円と、1度の発行額として過去最大になった。18日起債のパナソニック(6752)の発行額も4本立てで計2000億円になるなど、大型起債が相次いだ面も大きい。
■企業の資金確保ニーズ変わらず
日銀は18日の金融政策決定会合で、社債とCPの買い入れ拡大の期限を21年9月末と、半年間延ばすことを決めた。購入額の上限を維持しつつ、4月に追加した買い入れ枠については市場の状況に応じてそれぞれ配分すると修正した。
マニュライフ・インベストメント・マネジメントの押田俊輔氏は「20年の社債発行で企業の手元資金は潤沢になったが、新型コロナ感染拡大による景気悪化が改善しない限り、キャッシュを確保したいというニーズは変わらない」とみる。21年も高水準の社債発行が続くとの見方を示した。