【QUICK Market Eyes 片平正二、川口究】
■日銀は21年3月会合でETF買入を修正か、TOPIX型にシフトの可能性=野村証券
野村証券は21日付のリポートで「日銀は21年3月会合で上場投資信託(ETF)買入を修正へ」との見解を示した。18日の日銀金融政策決定会合で「より効果的で持続的な金融緩和を実施していくための点検」を行うことを決定したことを踏まえ、21年3月の決定会合で考えられるETF買入れ方針の変更をまとめたという。
それによれば、「ETFの年間買入れペースについては『年間12兆円を上限に買入れを行う』との旨の記載が削除され、『年間約6兆円に相当するペースで買入れを行うが、市場の状況に応じて買入れ額は上下に変動し得る』という新型コロナ前の方針に戻ると見ている」と指摘。コロナ対応の緊急的な措置が戻るだろうとしつつ、「10月以降、1回あたりのETF買入れ額が700億円台に戻るなど、すでに日銀の運営は新型コロナ前にほぼ戻っている。こうした変更は現状の買入れ運営を追認するものに留まろう」とし、実際は現状と同じとみていた。
その一方で、「買入れ運営は柔軟化しており、さらなる減額の可能性は低い」とも指摘。日々の買入れ実施動向を基に試算すると、現在の実質的なETF買入れペースは年間約4兆5000億円になっているとしながら、「2021年は衆議院議員総選挙を控える『選挙イヤー』であり、積極緩和を求める菅政権と共同歩調をとることは、通常よりも重要性が高いだろう」とし、さらに減額する可能性は低いとも指摘した。
ただ一方で、ETFの買入対象についてはTOPIX型へのシフトが決定される可能性があるとも指摘。現在の日銀のETF買入れ対象は、①75%がTOPIXに連動するETF、②残りの25%がTOPIX、日経225、JPX日経400に連動するETFを対象に銘柄毎の市中流通残高に概ね比例して買入れ、としているとしながら、「この方針に基づくと、1回のETF買入れの各指数への配分は84:14:2(TOPIX:日経225:JPX日経400)であると試算」と指摘。TOPIX型へのシフトがさらに進んだ場合、日銀のETF買いが日々の売買代金に対して割合が高い順に需給インパクト出やすい銘柄をリストアップした。
■公的年金の株式投資は10~12月期も売り越しとなる公算が大きい=大和
日銀は21日、2020年7~9月期の資金循環統計(速報)を発表した。大和証券は21日付リポートで、公的年金の上場株式投資は約6000億円の売り越しと、3四半期ぶりの売り越しとなったことを踏まえ、「株価の堅調推移が続いた10~12月期もリバランスにより売り越しとなる公算が大きい」と指摘した。公的年金の売買動向が反映されやすいとされる信託銀行は8、10、11月に売り越しであったほか、直近の年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)のポートフォリオ推計値では、国内株式割合は25.22%と基本ポートフォリオの25%と同水準まで上昇しているという。
公的年金の7~9月期の対外証券投資は約2.6兆円の買い越しと、27四半期連続で買い越しとなった。10~12月期は「公的年金による対外証券投資は買い越しが継続すると予想するが、その金額は縮小する可能性があろう」という。外国債券と外国株式の合計では基本ポートフォリオ50%との差が0.5%ポイントにまで縮小している。
企業型確定拠出年金の合計額は20年6月末に14.4兆円から9月末に14.6兆円へ18四半期連続で増加した。総資産に占める株式・投資信託の割合は0.2%ポイント上昇した一方で、現金・預金の割合は0.2%ポイント低下した。「老後資金への不安やコロナ禍による投資家層の拡大により、資産全体の増加に加え、
株式・投資信託の構成割合の上昇が継続するか注目したい」との見解を示した。
<金融用語>
資金循環統計とは
資金循環統計とは、国内の金融活動の動向を包括的に示す統計。金融機関や企業、家計など各部門の金融取引(フロー)や金融資産・負債の残高(ストック)などが、預金や貸出といった金融商品別に記録される。日本銀行調査統計局が四半期をひとつの期間として作成し、当該四半期の約3ヵ月後に速報、約6ヵ月後に確報を公表する。