【NQNニューヨーク 古江敦子】インターネット上の代表的な暗号資産(仮想通貨)であるビットコインの先高観が根強い。情報サイトのコインデスクによると、12月23日は再び1ビットコイン=2万4000ドル台と20日に付けた過去最高値(2万4273ドル)に近づく場面があった。上昇の背景にはドルなど法定通貨への不信感などがあるが、米当局の規制強化が逆にビットコインの買い安心感につながり、追い風になったと見る市場参加者は多い。上昇が続いてきたことで目先は価格調整も見込まれるが、大口機関投資家の買い需要は2021年も続くとみられる。
■「仮想通貨市場の先行きにプラス」
米証券取引委員会(SEC)は22日付で米リップルが取り扱う仮想通貨「XRP」を有価証券とみて、投資家保護に違反したとして提訴した。23日はXRPが一時3割強下げるなど多くの仮想通貨が連れ安したが、ビットコインは取引が厚くなってきたこともあって下げは限定的だった。リップル提訴で市場が悲観一色となったわけではなさそうだ。
デジタル通貨運用会社のJSTキャピタルのスコット・フリーマン氏は「SECは仮想通貨の取引自体に否定的ではない。取引の枠組みが明確になることで透明性がより高まるため、仮想通貨市場の先行きにとってプラスだ」と受け止めている。カナダの同業3iQのフレドリック・パイ氏も「規制当局の行き届いた監視は安全な取引の裏付けとなり、安心感から大口投資家の買いを集めやすくなる」と楽観的だ。
3iQのパイ氏は今年の仮想通貨の躍進について「ポール・チューダー・ジョーンズ氏など大手ヘッジファンドがビットコインを好評価し、北米をはじめ世界の機関投資家が長期運用資産として投資し始めたことが大きい」と語る。コインシエアーズが21日公表した統計による、年初から12月18日までに仮想通貨ファンドへの機関投資家からの資金流入は55億7000万ドルと2019年の5.6倍になった。
■買われすぎの兆候も
もっとも、目先は相場に調整が入り売りがかさむことを懸念する声もある。JPモルガンは18日付リポートで、先物の需給などによる独自のテクニカル分析で「ビットコインは買われすぎの兆候があり、適正水準への調整リスクがある」と結論づけた。商品投資顧問業者(CTA)など短期トレーダーの持ち高調整で相場の変動性が高まることには警戒が必要だ。
コインシエアーズのメルテム・デミロアーズ氏は「金に比べビットコインはインフレによる損失回避の資産としての歴史が浅いが、機関投資家は金を売ってビットコインに資金を振り向け始めている」と語る。21年前半の値動きには警戒が必要だが、長期的に需要を集め、来年以降も最高値を更新し続けるとの見方は根強いようだ。幅広い参加者による仮想通貨の本格的な取引はまだ始まったばかりといえそうだ。
<金融用語>
仮想通貨とは
仮想通貨とは、インターネット上でやり取りされる通貨としての機能をもつもの。英語表記はcrypto currency(暗号通貨)。国や中央銀行などの公的な発行主体や管理者が存在せず、専門の仮想通貨取引所を介して円やドルなどの法的通貨と交換したり、物品の購入やサービスの提供を受ける際の決済手段、不特定の人間との売買に使用したりできる。ビットコインが代表的。日本では2017年4月施行の改正資金決済法で取引所に登録制が導入され、マネーロンダリング対策や利用者保護が図られている。