【QUICK Money World 吉田 晃宗】来週(12月28日~)の上場REIT(不動産投資信託)市場を展望するために、QUICKが今週配信したREIT関連ニュースを振り返った。株式相場が軟調(日経平均が週間で0.4%安)な一方、足元のREIT相場が堅調なことに着目する記事が出ていた。また、日銀がREITの買い入れを、個別銘柄ではなくETF(上場投資信託)を通じた買い入れに切り替えるとの思惑も出ていた。来週はREITの決算発表は予定されていない。
今週の主要REIT指標の騰落率は以下となる。REIT相場は堅調に推移した。一部で懸念されていた、18日引け後の指数組み入れに伴う先回りの買いの反動は目立たなかった。
銘柄名 | 騰落率(%) |
東証REIT指数 | +0.87 |
東証REITオフィス | +1.53 |
東証REIT住宅 | +1.33 |
東証REIT商業 | +0.12 |
東証REIT物流フォーカス | +0.79 |
■日銀のJ-REIT買入れ、ETF切り替えで格付AA-未満の銘柄群にプラスも=野村(12/21)
日銀は18日の金融政策決定会合で、新型コロナウイルス対応で導入した企業の資金繰り支援策の延長を決めた。また、経済・物価への下押し圧力が長期間続くとし、「より効果的で持続的な金融緩和を実施するための点検を行う」と表明した。
野村証券は18日付のJ-REIT(日本の上場不動産投資信託)リポートで、「日銀としては物価目標2%の実現までほど遠い状況が続く限りは、現在の金融緩和政策のパッケージを縮小方向に変更することは難しい」と予想。また、「少なくとも来年3月の時点で新型コロナの影響が相当程度収束していることは考えにくく、J-REITの買入れペースについても年間約900億円を基本としながら上限を年間約1800億円とする現在の方針から変更しない」と予想した。
一方、「日銀がJ-REITの年間買入額の方針を維持するとしても、買入れルールの一部を変更する可能性は考えられる」との見方も示した。現状、日銀はJ-REITの買い入れについて、買入対象銘柄の発行済み投資口の10%を保有上限としているが、既に5社について上限の10%に近づいていると指摘。2015年12月に日銀はJ-REITの個別銘柄ごとの買入上限比率を5%から10%に引き上げた経緯があることから、21年3月に再び買入上限比率を引き上げる可能性があると予想している。
また、現行の株式買入同様、個別ではなくETF(上場投資信託)を通じた買入れに切り替える可能性もあると予想した。
リポートでは、「日銀が今後J-REITの買入上限比率を引き上げるとしても、市場参加者間で日銀のJ-REIT買入れ継続は共通認識となっており、基本的にはJ-REIT相場や各銘柄の株価には影響しない」との見方を示した。
一方で、ETFを通じた買入れに切り替えるとすれば、現在、買入の対象となっていない外部格付けAA-(ダブルエーマイナス)未満の銘柄群にとって「信用補完的な意味合いでプラスとの見方が生じる可能性がある」との見方も示されている。(QUICK Market Eyes 大野弘貴)
■J-REIT、東証REIT指数の逆行高から示唆される2つのこと=野村(12/23)
22日の東証REIT指数は前日比0.5%上昇した。その一方でTOPIXが同1.6%下落し、東証33業種の株価指数も全て下落した。
野村証券は22日付リポートで、「東証REIT指数の逆行高に敢えて何らかの示唆を見出すとすれば、二つの事が考えられる」と指摘。一つは本来の特性とも言えるディフェンシブ性の回復であるという。22日は株式相場の突発的なリスクオフとも言える中、J-REIT相場がディフェンシブ性を発揮したとみる。
もう一つとしては、J-REIT相場の日本株相場に対する極端な出遅れ感の解消の始まりであるという。TOPIXが20年初から12月22日までに4%上昇している一方、東証REIT指数は20%下落している。「その顕著な出遅れ感に注目する向きが出てきている可能性がある。22日現在J-REITの加重平均配当利回りは4.2%、同株価/NAV倍率は0.95倍で、買われても不思議はない水準にある」と指摘した。
こうした状況を踏まえ「年初から2割下落しているJ-REIT相場がその水準や持ち前のディフェンシブ性から下がりにくい状況となっており、今後一層のリスクオンに傾く可能性もある株式相場に対するJ-REIT相場の顕著な出遅れ感に注目する向きも徐々に表れているとすれば、今後のJ-REIT相場は少なくとも下値は堅く、更に出遅れ感を解消する形で上昇する展開となることも現実的になってきていると考えられる」との見解を示した。(QUICK Market Eyes 川口究)
■REIT決算&開示情報
12/23 <決算>森トラストホテ(3478) 分配金(641円←未定 2021/02)