【QUICK Market Eyes 池谷 信久】米債市場で10年物ブレーク・イーブン・インフレ率(BEI、債券市場が織り込む期待インフレ率)は1.9%台後半まで上昇し、2%の節目に迫っている(青線)。1.9%台後半は2019年3月以来、2%台に乗せれば2018年11月以来の水準となる。名目金利が一定ならBEIの上昇は実質金利の低下をもたらす。実質金利の低下はドル安や株高の要因とされている。
BEIは景気動向に加え商品市況の影響を受けやすい。銅価格は、新型コロナウイルス感染を抑え込んだ中国の需要拡大を背景に、2013年2月以来の高水準で推移している(赤線)。一方、米国の感染者数は高止まりしたままだ。米BEIの上昇は「期待先行」の面が大きく、急速に伸び悩む可能性もある。
<金融用語>
ブレークイーブンインフレ(BEI)率とは
ブレークイーブンインフレ率とは市場が推測する期待インフレ率を示す指標のこと。英語表記(Break Even Inflation rate)を略して「BEI」とも呼ばれる。物価連動国債の売買参加者が予測する今後最大10年間(物価連動国債の残存期間次第で10年未満になる場合がある)における年平均物価上昇率を示す。ここでの物価変動はコアCPIと呼ばれる「全国消費者物価指数(生鮮食品を除く総合指数)」を基準とする。 物価連動国債の利回りを実質金利と呼び、実質金利と長期金利(長期固定利付国債利回り)の間には理論的に「期待インフレ率≒長期金利-実質金利」という関係が成立する。実質金利は物価連動国債の市場価格から計算できるので、同年限の長期金利と対比することにより、期待インフレ率を逆算推計することが可能となっている。 ただし、実質金利に対応する物価連動国債の市場価格は、期待インフレ率以外の要因として需給関係や流動性などのリスクプレミアムの影響を少なからず受けるとの考え方が通説となっている。