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新型コロナ補助金効果でふるさと納税が熱い、「ふるなび」運営アイモバイルは恩恵享受か

QUICK Market Eyes  本吉亮】新制度の開始で下火となっていた「ふるさと納税」だが、コロナ禍で再び脚光を浴びている。農水省による時限措置の新型コロナウイルス対策補助金を背景に「寄付額の3割」以上の返礼品を提供する自治体が相次いでおり、年末にかけて駆け込みで申し込む人が多そうだ。元横綱・貴乃花を起用したCMが話題のふるさと納税サイト「ふるなび」を運営するアイモバイル(6535)は、足元でふるさと納税事業が収益のけん引役となっており、業績拡大への期待感が高まるのではなかろうか。

※アイモバイル株価と日経平均株価の相対チャート
※アイモバイル株価と日経平均株価の相対チャート。(2019年末を100として指数化)

■ふるさと納税に再注目

「ふるさと納税」は、地方自治体への寄付金制度として2008年に導入された。自分が住む自治体などに納おさめる税金の一部を、故郷や応援したい自治体に寄付するもので、寄附金から自己負担金の200円を引かれた金額が所得税や住民税の控除対象として戻ることから、実質2000円で寄附した自治体から返礼品がもらえる。制度発足当初は、返礼品を提供している自治体が少なく魅力的な返礼品に乏しかったほか、手続きの煩雑さなどもあり注目度は低かった。

ただ、2015年にふるさと納税の控除限度額が従来比2倍に拡大されたほか、確定申告を行わなくてもふるさと納税の寄附金控除を受けられる仕組み「ふるさと納税ワンストップ特例制度」が創設されたことで注目度がアップ。さらに、泉佐野市を筆頭に換金性の高い商品券やポイントなどが乱れ飛ぶ返礼品競争が起こり、市場規模は一気に急拡大した。

この動きを問題視した総務省が適正化に乗り出す。問題児の泉佐野市などを除外したほか、19年6月からふるさと納税の新制度をスタートさせた。自治体が返礼品を送付する場合「調達額が3割以下の地場産品に限る」ことが義務化され、それまで人気だった「還元率40%以上の換金性が高いギフト券」「海外メーカー製のドライヤー」のような返礼品が姿を消したことでふるさと納税ブームは下火となった。

しかし、2020年の新型コロナウイルスの感染拡大の影響で思わぬ事態が起きている。農林水産省は6月にコロナ禍で売り上げが落ちた牛肉、魚、果物などの販売促進のため、農協などの事業者向けに、生産者からの購入額の半分を補助する「新型コロナウイルス対策補助金」を始めた。これがふるさと納税の返礼品への適用にされたことで、自治体は従来と同じ返礼品代を事業者に支払えば2倍近い量が調達でき実質的に「寄付額の3割」を上回る返礼品が可能となり、返礼品競争が再び起きている。この補助金制度は21年1月末までの時限措置のため、年末年始に向けて駆け込みでふるさと納税を行う人が急増する公算が大きいだろう。

■「ふるなび」人気で上振れ期待

アイモバイル(6535)はインターネット広告事業が祖業ながら、足元ではふるさと納税サイトが主体のコンシューマ事業が収益のけん引役となりつつある。同社は2014年7月にふるさと納税サイト「ふるなび」の運営を開始。15年11月に高額寄附者向けふるさと納税代行サービス「ふるなびプレミアム」、19年10月に「あとでゆっくり選べる」といったユーザーの時間的制約を無くすことで利便性を向上させるサービス「ふるなびカタログ」などをリリースし、顧客の利便性向上に努めている。

※アイモバイルの事業について
決算説明資料より

アイモバイルが12月中旬に発表した2020年8~10月期(1Q)連結決算は、売上高が前年同期比0.8%増の33億7300万円、営業利益は72.0%増の5億7900万円と大幅増益。「ふるなび」を展開するふるさと納税事業において、制度の認知度向上による市場規模拡大に加えて、新型コロナウイルス感染症の影響による巣ごもり消費や節約志向が追い風となった。

※アイモバイルの業績

※同上

積極的なキャンペーン効果もあり会員数、寄付件数ともに増加して寄付金額が前年同期の約2.5倍に増加したことが寄与した。通期予想は期初計画(売上高が前期比8.0%減の137億円、営業利益11.3%増の25億円)据え置きとしているが、1Q営業利益の進捗率は23%で前年同期(15%)を上回っており、上振れ期待が強そうだ。

※寄附受付件数、会員数と契約自治体数の推移

<金融用語>

ふるさと納税とは

ふるさと納税とは、納税者が任意の自治体に納税(寄付)をすることで、税金が軽減される仕組み。個人の場合、寄付額のうち2,000円を超える部分について一定の上限まで原則として所得税・個人住民税から全額が控除される。納税者にとって「各地の名産品等がお礼として受け取れる」「納める税金の使い道を指定できる」等のメリットがある。地方の自治体の増収にもつながる一方で、現在納税者(寄付者)が住んでいる自治体の税収が減る等の問題も指摘されている。 2016年4月からは、自治体の地方創生プロジェクトに寄付をした企業が減税を受けられる「企業版ふるさと納税」が創設された。自治体が提案し、地域活性化の効果が高いと政府が認めた事業に対し企業が寄付をすると、寄付額の3割分が法人住民税や法人事業税から税額控除される。現行の措置と併せて税負担の軽減効果を2倍に高め、寄付額の下限を10万円とすることで、企業の制度活用を促す。一方、制度の乱用で自治体と企業の不正の温床になることを防ぐため、自治体による入札優遇や低利子融資といった見返りを禁じている。

著者名

QUICK Market Eyes 本吉 亮


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