【QUICK Market Eyes 片平正二】新型コロナにも関わらず、各国中銀の金融緩和やワクチン期待で2020年の株式相場は堅調だったが、米国上場の上場投資信託(ETF)をみると異例の年だったことが示唆されている。従来はS&P500に連動するスパイダーS&P500ETFなどのベンチマーク型のETFにパッシブ投資家の資金が集まっていたが、昨年の年初来の資金流入額上位にアクティブ型のETFが顔を出したからだ。破壊的な技術革新をもたらすテスラなどを組み入れるARKイノベーションETF(ARKK)である。
■なぜARKK?
1位は米国市場で米国の大型・中型・小型株を投資対象とするバンガード・トータル・ストック・マーケットETF(319億ドル)だったが、3位のナスダック100指数と連動するパワー・シェアーズQQQ(QQQ、176億ドル)、そしてARKKが5位に入った。ナスダック総合指数の強さを受けてQQQに資金が流入するのは理にかなっているが、S&P500に連動するバンガードS&P500ETF(209億ドル)など、バンガード系のETFは信託報酬がスパイダーなどに比べて低コストのため近年、人気を博している。そこにARKKが加わったことは、スクエアなどの成長株に対する米個人投資家の人気の高さを示すものと言えそうだ。
気になるのは、ARKKへの資金流入が12月にかけていっそう強まったこと。テスラのS&P500指数採用という指数イベントを受けてテスラが大幅高となったことが影響したとみられるが、iシェアーズMSCIジャパンといった分散投資のために使われそうな他のETFと比べてもARKKの足元の資金流入はかなり激しいものとなっている。
■「上昇したものは下がらなければならない」
著名金融ブログのゼロ・ヘッジは昨年12月29日、ARKKへの資金流入がやや鈍化したことを受け、「増加トレンドが一服した。上昇したものは下がらなければならない」と急伸の反動を警戒していた。同日の米国市場でARKKは4.22%安で大幅に4日続落し、23日に設定来高値を付けた後は利食いが優勢だ。
ARKKはテスラのほか、ドキュサインやインビテなど米成長株を48銘柄組み入れているため、仮に調整となった場合に市場への影響は限られそうだが、ナスダック総合指数やテスラと共に好パフォーマンスを記録していたことからセンチメントの悪化に響きそう。バイデン新政権や菅政権の環境政策もあり、引き続きイノベーションをもたらす環境関連銘柄などへの関心は高まりそうだが、日本株でもそのようなETFができる場合に組入が期待される銘柄も指摘されており、長いテーマとして関心を集めそうではある。