【日経QUICKニュース(NQN) 山田周吾】外国為替市場で日米の金利差に着目した円・ドル取引が増えてきた。米国で大統領職と上下両院の多数派を民主党が占める「ブルーウエーブ」が決定的になり、米長期金利の上昇が加速してきたのがきっかけだ。米長期金利の急低下後に消滅しかかった日米金利差が再び開き、鳴りを潜めていた「金利差トレード」に復活の兆しがみえている。円は対ドルでの膠着相場を脱していくかもしれない。
■日米金利差は米長期金利の動き次第
ブルーウエーブで米国のバイデン次期政権は国債増発による積極財政に動きやすくなるとの見方が、米長期金利を押し上げている。1月6日は節目の1%を約10カ月ぶりに上回った。金利差拡大に関心が高まり、円相場は6日の海外市場で1ドル=103円44銭近辺と約1週間ぶりの安値を付けた。
QUICKによると、2020年2月末時点で1.3%台だった日米の10年債利回り差は、新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で金融・資本市場が大混乱に陥った20年3月に急激に縮小した。その後も縮小は続き、20年8月には0.5%を下回る水準まで縮んだ。
日本の長期金利は日銀がゼロ%程度という誘導目標を設定しており、ほぼ固定されているといっていい。日米金利差の変動は米長期金利の動き次第という側面が大きい。ここにきて米長期金利の上昇圧力が高まっており、6日時点では金利差も1%を3月19日以来、約10カ月ぶりに上回った。
※米金利から日本の金利を差し引いた金利差の推移
■「105円まで下落する可能性がある」
三井住友トラスト・アセットマネジメントの押久保直也氏は「米長期金利にはまだ上昇余地があり、円は105円まで下落する可能性がある」と話す。米国が追加経済対策やインフラ投資に積極的になれば景気の回復を後押しし、米長期金利を押し上げるという見立てだ。
日米金利差が再び脚光を浴びれば「低金利の円を借りて、高金利のドルを買う『円キャリー取引』も活発になり得る」(みずほ銀行の唐鎌大輔氏)との見方がある。円相場が乱高下した20年2~3月を過ぎた同4月以降、日米金利差が消えかかるのと歩調を合わせて円の値幅は狭まった。今後、米長期金利の上昇とともに金利差が拡大していけば、円相場は膠着を脱していく公算は大きい。