【NQNニューヨーク 張間正義】代表的な暗号資産(仮想通貨)であるビットコイン相場が1月14日、再び4万ドル台に上昇する場面があった。14日午後7時15分(日本時間15日午前9時15分)からバイデン次期大統領が追加経済政策の優先順位を付けたアジェンダ(行動計画)を発表する予定だったため、巨額の財政出動と大規模な金融緩和の長期化を見越した短期の投資家が、ドルの価値低下を予想して「無国籍通貨」であるビットコインを買い上がったようだ。
■追加経済対策は1.9兆ドル
追加対策の規模については「2兆ドル」(米CNN)、「3兆ドル」(米ニュースサイトのアクシオス)などと、市場予想(1兆ドル程度)を上回る規模の観測報道が相次いだ。14日、バイデン氏が発表した追加対策案は1.9兆ドル(約200兆円)規模だった。もっとも、そのまま実現するかは分からない。民主党が求めている大規模な地方・州政府への財政支援などは「小さな政府」を志向する共和党にとっては受け入れがたいためだ。
民主党で急進左派のサンダース上院議員などが訴えている大規模な経済政策は「財政調整法」を使えば民主党単独で実現可能だ。その場合でも中道派の取り込みなど、党内の意見集約は容易ではない。バイデン氏にとっても就任早々、急進左派寄りの政策運営は市場参加者の心証を損ねる可能性があり、避けたいところだ。
■ボラティリティー高いビットコイン
巨額の財政観測に対して株価や債券相場の反応は乏しかった。比較的反応が目立ったのが外国為替市場のドルと裏表の関係にあるビットコインだ。情報サイトのコインデスクによると、14日午前に一時4万66ドル程度まで上昇した。11日には、8日に付けた4万2000ドル近くの過去最高値から2割強下落する3万ドル割れぎりぎりまで下落したが、その後は戻り歩調で、再び最高値に接近してきた。
買い手は高いボラティリティー(変動率)を好む短期筋が中心だ。スタンレー・ドラッケンミラー氏など著名投資家がたびたびビットコイン相場に言及し、昨年来、機関投資家の参入が相次いでいるとされているものの、実際のところは「あまりにも高いボラティリティーで機関投資家の参入は進んでいない」(英紙フィナンシャル・タイムズ)との見方もある。
■機関投資家の参入増が必要
ゴールドマン・サックスの商品リサーチヘッド、ジェフ・カリー氏は12日、ビットコインについて「機関投資家の保有比率は1%程度にとどまる」と指摘した。機関投資家の買いが昨年後半からの相場上昇を支えてきたとの一般的な見方とは異なる。カリー氏は相場を安定させるには、むしろ今後「機関投資家の参加を増やす必要がある」と主張する。ただ、2~3日で保有価値が3割も下がる金融商品を年金基金など伝統的な機関投資家が投資対象とするかどうかについてはかなりの疑問が残る。さらにカリー氏は、ビットコインの市場を巡る今後の動向について、価格変動のあまりの激しさから「予想は困難」と、さじを投げる。
週初の急落場面ではBKアセットマネジメントが「2万ドル近辺まで下がれば押し目買いが広がる」と予想していた。ゴールドマンの見解は、機関投資家の組み入れ比率がわずかなため「まだ相場は上がる」ことを示唆しているともとれる。「長期的に14万6000ドルまで上昇する」と予想したJPモルガン・チェースなど、相次いでビットコインの先高観を表明しているのは、そこにビジネスチャンスがあると「ウォール街」が感じているからようにもみえる。
ビットコインの価値を根底で押し上げるドル減価の背景には、米国の財政赤字の拡大と低金利の長期化がある。ここからの出口は当面みえない。米連邦準備理事会(FRB)のパウエル議長は14日、「米連邦債務は持続不可能にはほど遠い」や「利上げ時期は間近にはない」などと、ビットコインにとっては追い風となる発言を繰り返した。世界のマイナス金利の債券の残高は17兆ドルを超え過去最大だ。伝統的な機関投資家も収益確保のため、変動の激しいビットコイン投資に真剣に取り組まざるを得ない時期が早々に来るのかもしれない。