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Goal9「産業と技術革新の基盤をつくろう」―SDGsの今を知る

SDGsの今を知る VOL.10 クラウドクレジット編集部

SDGsのゴール9として、「産業と技術革新の基盤をつくろう」が掲げられています。

日本では、道路や鉄道、水道・電力、情報通信など、日常生活や産業などの経済活動を営む上で必要な社会的基盤(インフラ)が整備されており、これらサービスにアクセスすることが出来ます。しかしながら、世界全体では、これらインフラのうち、特に日常生活を送る上で重要となる水や電気へのアクセスも十分でない地域も多く存在しているのも現状です。

かかる現状を是正し、産業や技術革新の基礎をつくるために、SDGsゴール9が掲げられています。

※SDGsアイコン「9.産業と技術革新の基盤をつくろう」

このゴールを目指し、包摂的・持続的な経済成長を達成するための具体的な指標として、インフラ開発、産業開発、イノベーションに係る以下の指標が掲げられています。

9.1

全ての人々に安価で公平なアクセスに重点を置いた経済発展と人間の福祉を支援するために、地域・越境インフラを含む質の高い、信頼でき、持続可能かつ強靱(レジリエント)なインフラを開発する。

9.2

包摂的かつ持続可能な産業化を促進し、2030 年までに各国の状況に応じて雇用及び GDP に占める産業セクターの割合を大幅に増加させる。後発開発途上国については同割合を倍増させる。

9.3

特に開発途上国における小規模の製造業その他の企業の、安価な資金貸与などの金融サービスやバリューチェーン及び市場への統合へのアクセスを拡大する。

9.4

2030 年までに、資源利用効率の向上とクリーン技術及び環境に配慮した技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる。全ての国々は各国の能力に応じた取り組みを行う。

9.5

2030 年までにイノベーションを促進させることや 100 万人当たりの研究開発従事者数を大幅に 増加させ、また官民研究開発の支出を拡大させるなど、開発途上国をはじめとする全ての国々の産業セクターにおける科学研究を促進し、技術能力を向上させる。

9.a

アフリカ諸国、後発開発途上国、内陸開発途上国及び小島嶼開発途上国への金融・テクノロジー・技術の支援強化を通じて、開発途上国における持続可能かつ強靭(レジリエント)なインフラ開発を促進する。

9.b

産業の多様化や商品への付加価値創造などに資する政策環境の確保などを通じて、開発途上国の国内における技術開発、研究及びイノベーションを支援する。

9.c

後発開発途上国において情報通信技術へのアクセスを大幅に向上させ、2020 年までに普遍的かつ安価なインターネットアクセスを提供できるようにする。

(外務省HPの情報を元にクラウドクレジット編集部が作成 参照)

経済の持続的な経済発展とインフラ開発

過去約半世紀に亘り、東アジア諸国は目覚ましい経済成長を遂げました。世界銀行の「東アジアの奇跡」等の分析によれば、この主な要因の一つとして、経済・社会インフラ整備が進められたこと、その結果、民間部門の活力が引き出され、工業化をはじめとする産業の多様化・高度化が進んだことが挙げられています。

一方で、ゴール6(「安全な水とトイレを世界中に)、ゴール7(「エネルギーをみんなにそしてクリーンに)の記事でも触れられている通り、現在、多くの開発途上国において、人々が日常生活を送るうえで必要なインフラは十分に整備されているわけではありません。低所得国はじめ、多くのアフリカ諸国では、インフラの未整備により、企業の生産性が約40%損なわれているといわれています(国際連合HP)。

アジア開発銀行は、過去急激な成長を遂げたアジアの開発途上国においても、その経済成長を維持するためには、今後10年で少なくともGDPの5%以上のインフラ支出を行う必要があると提言しています(アジア開発銀行HP)。

昨年来、多くの国で、新型コロナ感染拡大抑止を目的に、世界中で外出自粛などの行動制限が課されています。エッセンシャルワーカー(社会生活の維持に必要な、医療・物流等関係者)以外の多くの方は、在宅勤務に移行しましたが、これも、自宅にインターネットのアクセスがあるからこそ可能となったことなのです。国際電気通信連合(ITU)によれば、自宅からインターネットにアクセスができる人の割合は、2019年時点では57%、うち、途上国の同割合は48%程度(国際電気通信連合HP)、特に、サハラ以南のアフリカ諸国や南アジア諸国における同割合が低くなっており(世界銀行HP)、仕事の継続が難しくなることによる収入減等の影響から、これらの地域の人々の所得減が深刻になる可能性があると予測されています(国連開発計画 HP)。

イノベーションで社会課題の解決を試みる

昨年末、UNICEFから、3歳~17歳の子供のうち、世界全体の約67%にあたる13億人が、また、南アジアやサハラ以南のアフリカ諸国では、約9割の子供たちがオンライン授業を受けられていないという、これは、ゴール4(「質の高い教育をみんなに)達成のために尽力してきた機関に、非常にショッキングな調査結果が発表されました(UNICEF HP)。インターネットへのアクセスがないことで、将来を担う子供たちの教育機会が失われ続けることがないよう、これらの地域の政府は、TVやラジオを通じて教育番組を提供しており、学校にいけない子供たちに、せめて教育を受け続けさせるために、未電化地域でのソーラーホームシステム(SHS:家庭用の小型太陽光パネルと蓄電池、照明やテレビなどの家電製品を組み合わせたもの)への需要が非常に高まっているとのことです。このSHSのビジネスモデルは、2010年頃から、銀行口座がない未電化地域の貧困層の人々への電気アクセスを確保するために、支払った分だけ電気を使うことが出来る割賦販売の仕組み(Pay-As-You-Go:PAYG)を導入するという、利用者である貧困層目線でのイノベーティブな発想から産まれたものです。

インフラ整備が十分でない途上国だからこそ、様々なインフラや関連規制が整備されている先進国とは違う、イノベーティブで利便性の高いサービスが生み出されると考えられます。例えば、携帯電話の入金システムを効率化するために展開されたモバイルマネーシステムは、国民の大半が銀行口座やクレジットカードを持たない状態であったからこそ開発されたサービスと考えられます。また、医療機器の超音波画像診断(エコー)装置についても、途上国には高価で、かつ、電力供給が不安定なため、利用が進まなかったものが、現地のニーズを考慮し、低価格、かつ、外部電源に依存しないバッテリー駆動の製品を開発したところ、先進国において、緊急医療や巡回医療の現場ニーズに応える製品として、広く使われるようになった、という事例もあります。

産業化促進に向けた金融アクセスの重要性

今後、各国が持続可能な成長を達成するために、技術とイノベーションによる産業の多様化の促進がますます重要となります。なお、産業の初期段階で生産加工や製造に係る重要な役割を果たす零細・中小企業は、世界全体の企業数のうち9割以上を占め、また、50%以上の雇用を生み出していると考えられています(世界銀行HP)。しかしながら、途上国における零細・中小企業の金融アクセスは不十分であり、コロナ発生前の試算では、その割合は約35%程度と推定されています(国連HP)。そのためには、今後の成長が見込める企業が必要な投資を実現できるよう、金融サービスへのアクセスの実現も非常に重要になります。

終わりに

コロナによって我々の生活や行動様式、価値観が大きく変わりつつあります。今までのやり方が通用しなくなった時代の転換点において、世界中で様々な知が組み合わされ、イノベーションが生まれやすい状況にあるとも考えられます。世界中の人々が安心して日常生活を送ることが出来るよう、必要となる社会的インフラの整備が進み、全ての人へのアクセスが確保されるようなイノベーションが社会に取り込まれていくことを願って止みません。

 

(月1回配信します)

写真=Linh Pham/Getty Images


クラウドクレジット株式会社 :「日本の個人投資家と世界の信用市場をつなぐ」をコーポレートミッションとして掲げ、日本の個人投資家から集めた資金を海外の事業者に融資する貸付型クラウドファンディングを展開。新興国でのインフラ関連案件も多く、現地のマクロ・ミクロ経済動向などに詳しい。累計出資金額約337億円、運用残高約149億円、ユーザー登録数約5万人(2021年1月11日時点)


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