【日経QUICKニュース(NQN)】国内でESG(環境・社会・企業統治)への関心が着々と高まっている。金融情報会社QUICKのESG研究所が19日公表した国内の機関投資家を対象にした「ESG投資実態調査2022」では、日本株の運用で5年後にESG投資の割合を「増やす」との回答が30%だった。前回調査(22%)から増加した。ウクライナ危機をきっかけにしたエネルギー問題が浮上しても、日本の投資家の多くはESGを重視する姿勢を変えていない。
調査は毎年実施し、今回で4回目となる。国内に拠点を置く機関投資家を対象に2022年8月22日~10月4日に実施し、61社から回答を得た。日本株の運用にあたって5年後にESG投資の割合を維持すると答えた割合は7割で、「減らす」との回答はゼロだった。「増やす」と答えた有効回答である14社のうち、4社は現状より割合を30%以上拡大する方針だ。
昨年はロシアによるウクライナ侵攻をきっかけに国際商品市況が高騰するなど、ESG投資の問題点を指摘する声もある。調査ではESG投資の方針を変えたかとの質問には77%が「変えていない」と回答。「再生可能エネルギー産業への投資方針を見直した」との答えもゼロで、投資家の多くは脱炭素社会への移行が変わらないとみているようだ。
変更したなかでは「ロシアやウクライナに依存している企業への投資を厳格にした」との回答が18%で最も多く、「非人道兵器を扱う企業への投資を厳格にした」との回答が7%で続いた。
ESG投資の手法を巡っては、投資先の企業と直接対話する「エンゲージメント」が87%(複数回答可)と最も多く、割合は前回(83%)から増えた。「企業との対話では直接働きかけ、より実行力のある手段が選ばれるようになった」(ESG研究所)という。「議決権行使」も85%と前回(78%)から拡大した一方、ESG要因を企業分析や投資の意思決定に組み込む「ESGインテグレーション」は81%と前回(87%)からやや減少した。
ESGのエンゲージメント活動に関し、2022年度で重視しているテーマを巡る質問(複数回答可)では「気候変動」が100%となり、今回の調査で初めて全ての回答者が挙げた。ESG研究所は「コーポレートガバナンスコード(企業統治指針)の改定で東証プライム市場に上場する企業はESG方針や取り組みの開示が求められるようになり、投資家の注目度がより高まった」と分析する。多様な人材を確保・育成する「ダイバーシティ&インクルージョン」も62%と多かった。
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