【日経QUICKニュース(NQN) 宮尾克弥】スポーツ専門店大手のアルペン(3028)が1月22日、前日比337円(14.7%)高の2630円まで上げ、昨年来高値を更新した。2021年6月期通期の業績予想を上方修正し好感された。新型コロナウイルスの感染拡大からスポーツやレジャーでも密を避ける傾向が強まっている。アルペンといえば、スキーやスノーボードのイメージが強いが、冬でもキャンプやゴルフが人気だという。
■「密を避けるレジャーとしての人気は当面続く」
アルペンは21日、21年6月期の連結売上高を過去最高だった従来予想(2300億円)から2350億円に上方修正。純利益は84億円と、従来予想(36億円)から大幅に引き上げた。前期に比べ496倍になる見通し。21年6月期の月次の売上高は、消費増税の駆け込み需要の反動が出た9月を除き、12月まですべて前年を上回っている。
アルペンの好調の2つの柱は「ゴルフ用品とキャンプ用品」(アルペンのIR担当者)。ゴルフなら移動は自動車利用が多く、他人との接触が避けられる。キャンプも密を避けて楽しめるレジャーとして人気が高まっている。キャンプはコロナ以前からのブームがさらに加速しているという。コロナの収束は見えず、「密を避けるレジャーとしての人気は当面続く」(三木証券の北沢淳商品部投資情報グループ次長)。
■関連銘柄も好調
スポーツ用品店には追い風とみられていた東京五輪・パラリンピック開催中止の可能性が取り沙汰されるが、22日の東京株式市場はアルペンの上方修正に触発されたのかもしれない。相場全体が下落するなか、スポーツ用品店のヒマラヤ(7514)や、ゼビオホールディングス(8281)、アウトドア用品のゴールドウイン(8111)、スノーピーク(7816)がそろって逆行高を演じた。
※2019年末を100としてアルペンやGウイン、スノーピーク、ゼビオ、ヒマラヤ、日経平均株価を指数化
スポーツやアウトドアの要素を普段着に取り入れた「アスレジャー」の流行もスポーツ用品店には好材料。「アスレチック」と「レジャー」の組み合わせで、着心地の良さや機能性を重視した衣料だ。コロナで在宅勤務が増え、室内で過ごしやすい服装への需要が高まっている。アルペンも「ゴルフやキャンプのほか、アスレジャー関連もかなり好調」(IR担当)という。
アルペン、ヒマラヤ、ゼビオHDのPBR(株価純資産倍率)はいずれも1倍を割り込む水準。三木証券の北沢氏は「いずれも株価には割安感があり、アルペンの上方修正をきっかけに上値余地が意識される」と話す。
アウトドアのレジャー人気はこの先も続きそうだ。新たな趣味を楽しむ人々が増え、関連銘柄を押し上げていくかもしれない。アルペン株も上昇のスピードに乗りそうだ。
<金融用語>
PBRとは
PBRとは、Price Book-value Ratioの略称で和訳は株価純資産倍率。PBRは、当該企業について市場が評価した値段(時価総額)が、会計上の解散価値である純資産(株主資本)の何倍であるかを表す指標であり、株価を一株当たり純資産(BPS)で割ることで算出できる。PBRは、分母が純資産であるため、企業の短期的な株価変動に対する投資尺度になりにくく、また、将来の利益成長力も反映しにくいため、単独の投資尺度とするには問題が多い。ただし、一般的にはPBR水準1倍が株価の下限であると考えられるため、下値を推定する上では効果がある。更に、PER(株価収益率)が異常値になった場合の補完的な尺度としても有効である。 なお、一株当たり純資産(BPS)は純資産(株主資本)を発行済株式数で割って求める。以前は「自社株を含めた発行済株式数」で計算していたが、「自社株を除く発行済株式数」で計算する方法が主流になりつつある。企業の株主還元策として自社株を買い消却する動きが拡大しており、より実態に近い投資指標にするための措置である。