【QUICK Market Eyes 阿部哲太郎】足元の日本株市場は、半導体などのハイテクグロース株と景気敏感のバリュー株が循環物色される展開が続いている。1月25日から日本電産(6594)などを皮切りに本格化した2020年10~12月期の企業決算を受けた物色動向の変化が注目となる。20年は4~6月期、7~9月期ともに中国が先導した景気回復、自動車市況の持ち直し、旺盛な半導体や省力化投資などを背景に製造業に対する過度の悲観が修正されたことで株価は強含んだ。これに対して内需・サービス系の非製造業は、新型コロナウイルスの感染再拡大により慎重な見通しが大勢を占めている。
■出遅れテーマ
QUICKナレッジ特設サイトの「QUICKテーマ株 物色の風向き」のランキングで20日時点の75営業日前比で物色されているテーマを見てみると上位は、「太陽電池製造装置」「音楽配信」「パワー半導体」「総合重機」「電子部品製造装置」など再生エネルギー、EV(電気自動車)、省エネなどに関連するテーマ・銘柄が物色の柱となっていた。
対して、放置されている出遅れのテーマ・銘柄を見てみると対象期間中の下落率トップは「PC・周辺機器専門店」となった。期間中のTOPIX(東証株価指数)は、13.78%の上昇に対して構成銘柄は平均で24.52%下落した。次いで「地図・気象情報サービス」「がん治療薬」「書店・複合書店」「ディスカウントストア」などが並ぶ。テレワークや巣ごもり需要による業績拡大の一服やコロナ感染再拡大による影響などが主因とみられるが、物色の矛先が向かっていないことも出遅れの背景とみられる。
■出遅れ銘柄の来期は?
次に放置されているテーマの銘柄から業績拡大が見込める銘柄をピックアップするためにアナリスト予想の平均であるQUICKコンセンサスで来期の予想純利益の増益率のランキングを作成した。トップは地図のゼンリン(9474)だった。コンセンサスでは22年3月期は今期比2.2倍の26億円を見込む。新型コロナウイルスの感染拡大による自動車向けなどの苦戦や研究開発投資などで今期21年3月期は大幅減益が見込まれている。半面、自動車市況の回復や自動運転などの開発案件、堅調な公共向けなどもあり、来期は一転増益が期待されている。
「ディスカウントストア」では巣ごもり消費による伸びの反動で今期よりも来期の増益率の見通しが低い銘柄が目立つ。その中で「ドン・キホーテ」を展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(7532)は、21年6月期は純利益のコンセンサス予想が前期比9%増の549億円、22年6月期が同14%増の625億円と連続増益が見込まれている。
上半期はドン・キホーテなどディスカウント事業はインバウンド需要の消失や新型コロナウイルスの感染拡大による都市型店舗の客足減で苦戦した。一方で買収した総合スーパーのユニーの業態転換や海外リテール事業の好調で20年7~9月期は営業利益は過去最高益となった。海外リテール事業も伸びをけん引すると見られている。北米、アジアともに基調は強く、巣ごもり需要に加えて日本以上に外食の代替需要が強く、日本の農産品が人気を博している。20年7月に開業した香港パールシティ店は初月売り上げが10億円を超え、グループ内で1位となった。
ある外資系証券は、デジタル変革(DX)やマーチャンダイジング戦略推進によるドン・キホーテ業態再生プロジェクト、店舗の現場での生産性向上支援策、海外の成長などを背景として、コロナ後の新常態で小売りセクター内で成長が期待される銘柄として直近のリポートで強気の格付けを継続しているようだ。
<金融用語>
QUICKコンセンサスとは
QUICKコンセンサスとは、証券会社や調査会社のアナリストが予想した各企業の業績予想や株価レーティングを金融情報ベンダーのQUICKが独自に集計したもの。企業業績に対する市場予想(コンセンサス)を示す。一方、「QUICKコンセンサス・マクロ」は、国内総生産や鉱工業生産指数など経済統計について、エコノミストの予想を取りまとめたものをいう。 QUICKコンセンサスを利用したものとして、QUICKコンセンサスと会社予想の業績を比較した「QUICK決算星取表」や「決算サプライズレシオ」、QUICKコンセンサスの変化をディフュージョン・インデックス(DI)という指数にした「QUICKコンセンサスDI」などがある。また、「QUICKコンセンサス・プラス」は、アナリストの予想対象外の銘柄に会社発表の業績予想などを採用して、国内上場企業の業績予想を100%カバーしたものをいう。